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奇想天外と言えば、これほどの話しもないだろう。ダヴィッド(パトリック・ユアール)は血液を売るがごとくに、1回35ドルで精子を売った結果、生物学的な父親として身元開示の訴訟をおこされてしまった。しかも、その人数たるや142人である。医療機関に対して匿名で精子を提供していたにもかかわらず、子供たちは精子の提供者を知る権利があるというのだ。 子供たちの出自を知る権利か、男性への守秘義務かが、裁判で争われることになる。デヴィッドは医療機関に対して、匿名性を守らなかった損害賠償を求めて反訴をおこす。しかし、この映画はコミックである。厳しい裁判物ではなく、「クレーマー、クレーマー」と同じように、子供たちとデヴィッドとの裁判外でのやり取りが描かれていく。そして、同時並行的に、ダヴィッドの恋人の妊娠もからんでくる。 最初に身上書を見た子供は、自分の応援するサッカーチームのスター選手だった。自分でもサッカーをやるほどのサッカー好きの彼は、ゴールを決めた子供にコロッと参ってしまう。そこから142人の子供たちに興味をもって、密かに子供たちを訪ね歩く。役者志望、路上ミュージシャン、ゲイ、、黒人、薬物依存症、障害を持った子などなど、みな精一杯に生きている。何とか子供たちの力になりたいと思うが、借金を抱える彼は裁判に負けるわけにはいかない。 今まで、家族概念が拡大されてきた。しかし、今までの拡大は核家族のように血縁で結ばれた家族だけではなく、養親・養子なども家族だし、血縁だけが家族を繋ぐものではないという主張だった。ゲイの子育てなど、血縁を持ちようがなくても、愛情があれば家族を作れるといってきた。それに対して、この映画は血縁の父親を求める話なのだ。 子供たちは養親に対して充分に愛情をもっている。にもかかわらず、自分の生物学的な父親を知りたいのである。ここで精神的な関係と、血縁が等価なものとして提示されている。観念だけでは生きることはできない。肉体がなければ子供は生まれようがない。 家族映画は女性から子供へと主題が移って久しいが、やっと子供の視点での映画が撮られた。裁判の結果は、ダヴィッドの全面勝利だったが、彼は損害賠償のお金を放棄して、自分から名乗り出ることにする。甘い甘い話だが、本当に心温まるエンディングだった。新しい映画がアメリカ以外の国から生まれる。我が国を除く先進国では、どこでも必死の模索が続いている。この映画にアメリカも直ちに反応するだろう。 映画としては、2つ☆というのには些か抵抗がある。しかし、子供を主題にした映画を待っていたのだ。この主題に対して、大甘にして☆を2つ献上する。 原題は「STARBUCK」 2011年カナダ映画 (2013.2.1) |
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