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「SPLICE」とは、撚り継ぎするとか、重ね継ぎするという意味らしい。 2011年の最初に見た映画が、きわめて先鋭的な問題意識の映画だった。 しかも、多面的な読み込みを許す作品で、やや戸惑いながら、星を2つ献上する。 クライヴ(エイドリアン・ブロディ)とエルザ(サラ・ポーリー)は、最先端の遺伝子研究者である。 2人とも優秀で、製薬会社の研究部隊のリーダーである。 遺伝子操作で新薬を開発するのは、もやは常識だろう。 製薬会社が鎬を削っているはずだが、遺伝子操作はどこまで許されるのだろうか。
人間と高等動物のDNAは、大した違いはない。 両者を組み合わせれば、新たな種を造ることもできる。 彼(女)等は、動物同士のDNAを操作して、雌雄同体の新種を創った。 そして、その先に進んでしまった。 人間と動物のDNAを配合し、新種の生命体を生みだすことに成功した。 生みだされたのは、水中でも生きることのできる、人間そっくりの生き物だった。 しかし、これは犯罪である。 彼(女)等はこの生き物に、ドレン(デルフィーヌ・シャネアック)と名付けて、秘密裏に育てていく。 製薬会社は儲けを追求し、研究室の移動を命じてくる。 ドレンは急速の成長してくる。 そして、問題をおこし始める。 クライヴは何度も殺そうとするが、そのたびに、エルザの研究心に負けて、生き延びさせてしまう。 運動能力はもちろん、学習能力にもすぐれている。 愛情も理解する。 はじめのうちは女性らしかった。 エルザは母親のごとく、ドレンを可愛がる。 新種は人間の想像をこえていた。 速く走り、水中でも生き、空を飛び、おまけに尻尾には毒の針をもっていた。 気に入らなければ、毒針で一突きすれば、人間などたちまち死んでしまう。 ドレンはクライヴとエルザのセックスをみて、愛情表現の方法を知る。 そして、クライヴを誘惑し、セックスをしてしまう。 それを見たエルザは激怒するが、ドレンは雌雄を超えていたのだ。 やがて、男性に変性したドレンは、エルザをも犯してしまう。 エルザは母親に支配されて育ったので、母子関係が歪で、ドレンは一種のモルモットだった。 その歪みが、ドレンにも反映されていく。 男性への攻撃は、何に由来するのか。 ドレンは2人の男性を殺し、クライヴすら殺してしまう。 とうとうエルザはドレンを殺すが、その時にはエルザのお腹のなかには、ドレンの子供が宿っていた。 新種ができたときの危険性を、そのまま映像化しており、観客の危惧どおりに映画は進む。 動物同士の新種の誕生は、オス同士の攻撃性や変性など、ドレンの行動への大きな伏線であり、恐ろしいまでに肉薄してくる。 後半になると、どんな展開になるか読めなくなり、サスペンスの趣が強くなる。 この映画は、さまざまな読み方ができる。 まず、資本の飽くなき利潤の追求。 遺伝子操作への疑問、DNAによる新種の創造などなど、常識的な問題だけでも盛りだくさんである。 そのうえ、エルザの生い立ちから、母子への考察も深い。 我が国のように母性賛美などまったくない。 むしろ母親の愛情が、狂母の愛情に変わることや、独占欲など恐ろしい展開である。 最後には、大きなお腹をしたエルザに、会社は守秘義務を負わせて大金を支払う。 あれだけ大きなお腹になっていれば、中の子供はクライヴの子だか、ドレンの子だかわかるだろう。 映画は明示しないが、ドレンの子だろうと思わせる。 中絶しても良いのだ、と会社側から言われる。 しかし、エルザは<失うものは何もない>といって出産することを告げて、映画は終わる。 女性に厳しい映画でもある。 撮影監督を日本人の永田鉄男がおこなっている。 原題は「SPLICE」 2010年カナダ=フランス=アメリカ映画 (2011.1.12) |
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