タクミシネマ          ゲット・ショーティ

☆☆ ゲット ショーティ    バリー・ソネンフェルド監督

 大人の映画と言ったらいいのだろうか、とてもおしゃれな映画である。
最後にこの映画は、すべて映画を作っていたなかの話しだと、落ちがつくところもいい。
そして、映画に出ている人、作っている人、とにかく関係している人たちが、楽しんで作り洒落
ゲット・ショーティ [DVD]
劇場パンフレットから
のめしている。
もちろん実際は、苦労して作っているのだろうことは、想像に難くない。
しかし、そうした裏方の苦労はみじんも見せず、実に楽しげな映画に仕立てている。

 音楽との関係がいい。
どんなシーンにも、音楽が楽しげに入り、役者の登場に気持ちよく調和する。
映画の好きな連中の気持ちが、ちょっと古い音楽と実によくあっている。
映画が金儲けでありながら、それを作っている人間は、心から映画好きなことがあふれている。
B級映画の監督を演じるジーン・ハックマンが、いい加減な人生を歩きながら、映画だけは好きで、からっきし腕力がない男として、描かれているのがいい感じである。

 映画としては、導入部のマイアミのシーンが、ちょっとテンポがのろい。
しかし、マイアミからLAへと、映画の舞台が移るのも、マイアミのいい加減さと、LAの映画の町といった対比があって自然になじめる。
カリフォルニアの雨が降らないがゆえに、ハリウッドが映画の撮影場所になったという来歴を物語るように、この映画でもたくさんのオープンカーを登場させていた。
ジーン・ハックマンの乗っていたメルセデスの古いオープンが、くたびれていい味をだしていたし、ルッソの乗っていたBMWのオープンも似合っていた。
悪役がフェラーリのオープンに乗っていたのもおかしかった。

 話しとしては、たわいなく、特別なハラハラドキドキはない。
しかも、無断で家のなかに侵入できてしまうことが、都合五ヶ所もあり、ご都合主義もいいところである。
ジョン・トラボルタが、二度もジーン・ハックマンの家に侵入するは、レオがホテルの部屋に無断侵入するは、有り得ないことばかりである。
でも、そうしたことは目をつぶってもいい。
サスペンス映画では許されないが、この手の映画は、とにかく楽しければいいのである。

 ジョン・トラボルタは、「パルプ フィクション」で再評価されたが、今回も同じ演技である。
彼は演技がうまいわけではなく、その存在感がぴったりという幸運な役者なのだろう。
少し悪っぽい役柄が、彼のはまり役である。
ベット・ミドラーが、豊満な肉体を見せてジーン・ハックマンにすりよるシーンは嫌らしさがなく、ほほえましかった。
内心いやいやながら、そんなそぶりも見せず、ベット・ミドラーの相手をする彼も大人の対応でいい。
高齢者のラブシーンは落ち着きがあってゆったりする。
年齢のいった役者たちが、演技以外の味を醸し出すと、映画に余裕とか奥行きが出てくる。

 楽屋落ちがたくさん隠されているのであろうが、自分でもどこまでわかったか疑問である。
本格的に作られた映画と、比べること自体がナンセンスなのだ。
楽しんで作っていると見える、こうした軽い映画もいいものである。
金もかかっておらず小粒な映画なのだが、いわゆるb級映画とは違った意味で存在を許される。

1995年のアメリカ映画


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