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爆笑は香港からやってきた。 少林拳とサッカーを組み合わせたら、いったいどうなるか。 わが国の劇画の影響を受けたと思われる大胆なシーンの連続に、ただ大きな口を開けて笑う映画に仕上がっていた。 劇画をそのまま映画にしたような、この作品はカンフー映画などの伝統をもつ香港ならではものだ。 前半では入念に伏線をはり、終盤でそれがすべて効いている。 良くできた脚本だと思う。
SFXからワイヤー・カンフーまで、何でもありの娯楽作品で、取り立てて深刻な主題といったものはない。 徹底して馬鹿馬鹿しいほどの笑いの連続である。 こうした映画があるのは大賛成である。 笑いというのは非常に高尚な精神作用で、笑いを求めた作品を撮るのは、大変に難しいことだ。 昨年、わが国でも「ウォーターボーイズ」が公開されて、さわやかな笑いを誘ったが、映画としてのできは、この作品のほうが上である。 少林拳の修行をした6人兄弟も、いまはバラバラになって貧乏生活をおくっていた。 厳しい修行も今は昔、市井の生活に追われる毎日だった。 しかし、なかでも五男のシン(チャウ・シンチー)だけは、少林拳普及の夢をみて、厳しい生活のなかでも、武術に頑張っていた。 ある時、彼はサッカーのコーチのファン(ン・マンタ)に出会う。 いまはサッカー連盟の会長となったかつての同僚ハン(パトリック・ツェー)に、飼い殺し状態だった。 シンとファンの出会いは、かんたんには打ち解けなかった。 なかなかサッカーの話にはならないのだ。 二人がサッカーへとすすむまでが、鈍くて緩慢な展開で、やや退屈感に襲われる。 それが少林拳とサッカーが結びついてからは、怒濤の爆笑街道となる。 シンの蹴るボールは、火の玉となってうなりを上げ、敵のゴールに突き刺さる。 それだけではない。 威力を増した彼のシュートは、並みいる敵をなぎ倒し、選手ごとゴールへとたたき込む。 ゴールポストがひしゃげてしまうほどの威力なのだ。 SFXを駆使したシーンの連続である。 6人が各人各様の特技で、ボールをゴールへと運ぶ。 熱血サッカー爆笑物語に、華を添えるのはムイ(ヴィッキー・チャオ)である。 太極拳を体得しているムイは、やはり貧しい街のまんじゅう売りだった。 シンは彼女を美人だと誉めて、はげます。 その彼女が一時失踪するが、最後にはサッカーの試合に助っ人として登場する。 彼女はシンのぼろ靴を、花模様のアップリケで修理する。 このアップリケがまた爆笑ものであるが、こうした手作りが愛情表現になるのは、もはやアジアだけだろう。 平身低頭した人の頭に、靴をのせて磨くシーンがあったが、直接的な侮辱のスタイルは、身分制社会の名残である。 わが国の弁慶の股くぐりや、忠臣蔵の屈辱を耐えるシーンなど、封建社会ではどこでも同じだった。 今ではわが国でも、直接的な侮辱はパロディでこそあれ、侮辱される者に思い入れなくなっている。 笑わせるためには、入念な仕込みが大切で、綿密な脚本と適切な間合いが不可欠である。 顔の表情を描写するシーンには、やや間延びした感はあるが、それを除けば全体にリズム感よく展開する。 観客に考える時間的な余裕を与えずに、次から次へと話題を引っ張る監督の手腕はなかなかのものだ。 バナナの皮を踏んで転ぶという月並みなシーンも、少林拳との絡みで上手く使われており、平凡な仕草も使われ方次第だとよくわかる。 漫画チックでありえない話を、いかにもありそうに、しかも観客の潜在的な願望にそうかたちで、物語が展開されれば、大受けになるのは当然である。 ユニークな着眼点を、手堅くまとめている手腕は、相当な実力である。 チャウ・シンチーが監督・脚本・主演をつとめるこの作品には、無条件で星を一つ進呈するつもりだった。 しかし、映画が終わったとたん、会場から拍手がおきたのだ。 楽しい映画を見せてもらって、良くできていると感動した。 その気持ちが期せずして、拍手となって表れたのだろう。 私も拍手したのだから、この気持ちはよくわかる。 思わず拍手したくなる、たのしい作品だった。 わが国の観客は、喜怒哀楽を表さないと言われるが、やはり本当に感動したときには、素直に心が表現される。 出演者の名前が登場し始めて、拍手も一時なりやんだ。 しかし、最後に「劇終」とでると、再びどこからともなく拍手がわき上がった。 二度にわたる拍手に、本サイトは星二つを特別サービスとする。 2001年の香港映画 |
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