タクミシネマ              オープン・ユア・アイズ

☆☆ オープン ユア アイズ 
アレハンドロ・アメナーバル監督  

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オープン・ユア・アイズ [DVD]
 親の遺産で裕福に生活しているセサール(エドゥアルド・ノリエガ)は、女性にももてもてで、次から次へと相手を取り替えていた。
一夜限りと思っていたヌリア(チェテ・レーラ)が、命がけで惚れ込んでしまったことから、この物語が始まる。

 ヌリアは捨てられまいとセサールにしがみつくが、彼はすでに新しい恋人ソフィア(ペネロペ・クルス)に夢中である。
嫉妬心でいっぱいのヌリアは、セサールを助手席に乗せて心中を図る。
ヌリアは死亡し、セサールは助かるが、顔に醜い傷が残ってしまう。
好男子だった彼は屈折し、人間関係がぎこちなくなる。
そのため、ソフィアは彼から離れていってしまう。
悩んだ彼は、人体の冷凍保存の会社と契約を結び、150年後の世界に生まれるが、それは後で明かされる。

 顔の傷と自分の心が折り合えないことから、恋人の心が離れたことへと続き、恋人の心を取り戻したい願望が、現実と妄想の区別を消失させてしまう。
夢と願望が交錯し、何が現実か判らなくなる。
ソフィアに振られたと思うと、離れたいヌリアがベッドに現れたり、彼は憔悴の極みになる。

 そんなときなぜか、顔の傷が完全に消える手術が完成し、そのおかげで彼は以前の好男子に戻ることができる。
しかし、彼の心にしみ込んだ傷の顔は、彼の深層心理を支配し、トンでもないときにそれが顔を出す。
そのために、いつも鏡を見て自分の顔の確認をせずにはいられない。

 彼の妄想は肥大し、ヌリアと間違えたソフィアを殺してしまう。
この辺は物語が強引に進められ観客はついていくのが難しい。
ヌリアとソフィアの入れ替わりを映像としてみせるのは、難しいのはよく判るが、ここはもう一工夫あっても良かった。

 この殺人によって、彼は刑務所に収監される。
現実と妄想の区別が付かなくなっている彼は、精神分析の対象とされて、精神病棟に収監される。
そこで、精神科医のカウンセリングを受けながら、受刑が可能か調べられる。
後半はこのやりとりが中心になって、映画は進む。
やがて、人体の冷凍保存会社のことを思い出し、その会社に乗り込む。
そこで、冷凍保存と同時に、記憶も書き換えたのだと知らされる。

 ここで映画は、150年後の現在に移動している。
そして、彼の夢と現実の交錯が説明される。
ここにも、ソフィアや友人、それに精神科医が登場するが、それはセサールの記憶の仮象だという。
要は冷凍保存と一緒に、記憶を書き換える技術ができ、彼は顔に傷のない時代を買ったのだった。

 あまりの暗い体験に、彼は再度記憶を書き換えるべく、空へと飛び出し自殺を図る。
地面に衝突する寸前、画面は暗転する。
ここで終わりかなと思っていると、巻頭で繰り返された「起きなさい」という声だけが何度か聞こえて終わる。
この段階では、どれが夢でどれが現実だか、観客には判らなくなっている。
このあたりは、監督が観客に判断を投げている。

 実に複雑に組み立てられたサスペンスで、見応えがある。
現実と妄想のあいだに、行き交う意識を映像化している。
観念を極限まで追求しているところは、ルイス・ブニュエルを思い出させたし、入れ替わりなども彼の手法にそっくりである。

 しかし、ブニュエルよりもずっと複雑で、現代的である。
顔という表層的なことで、自分自身が崩壊したり、人間関係が変質したりといった現象を、現代的な美意識に絡めて描いているのだと思う。
それが現実だったり夢だったりと、とらえどころなく展開するが、最後は記憶を買ったのだと種明かしされる。

 スペインという国から出た監督だが、こうした人間の個人的な深層心理を扱わせると、先進国も後進国もあまり変わらない。
社会的な関係の中に人間を置いた映画は、先進国と後進国の差がひどく出てしまう。
しかし、人間の心理の奥深くを探る映画は、どんな国でもそんなに変わらない。
愛憎とか、性欲とか、どろどろした人間の観念をとことん突き詰めていくと、世界に通用する。
人間の心のあり様は、それほど変わらないということか。
夏目的世界よりも谷崎的世界である。

 この監督も若い人だと思うが、こうした観念を緻密に積み上げる作業は、ひどく体力のいることである。
老人にはこれほどの粘着的な体力はない。
しかし、低予算映画だからか黒がつぶれてカメラがいまいちで、次作ではライティングをしっかりとやり直したほうがいい。
これだけの構成力を持った人には、次作も期待できる。
最初の誰もいない道路のシーンが良く効いているし、目覚まし時計の繰り返しも暗示的だった。
ソフィアが白いドレスで立った最後の屋上のシーンが、非現実的で良かった。
ちょっと甘いが星2つを付ける。

1997年スペイン映画。


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