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デヴィッド・ヘルフゴッド(アレックス・ラファロウィッツ)という実在の男性が、ピアニストになるまでを描いたオーストラリアの映画である。 と言ってしまえば簡単だが、多くの示唆に富んだ映画で、オーストラリアの豊さと大きく変化してる社会を反映した人間関係の形成が感じられる。 そして、クラシックと呼ばれる西洋音楽が、いかに西洋人たちの精神生活と深く関わっているかに圧倒される。 ディヴィッドを演じたジェフリー・ラッシュと、その父ピーターを演じたアレックス・ラファロィッツの両者ともに上手かった。 レストアされた古いジャガーUが日常の足になっていたり、精神病院が非常に清潔であの費用は誰が負担しているのだろうとか、些細なことだが気になった。 主人公ディヴィッドは、裕福ではないが健全な両親のもとに長男として生まれる。 父親ピーターは「おまえは幸運だ。自分は小遣いをためて買ったバイオリンを、父親に壊された。 ピーターが父親になると、音楽でも生活ができるような裕福な工業社会になっている。 家族を壊す気かと言って、ディヴィッドが家族から離れるのを許さない。 農耕社会では階層移動がなく、農民の子供は農民にしかなれなかった。 自分の子供にも上昇指向を求めたが、精神構造は農耕社会のそれを引きずっていた。 コンクルールで優秀だったディヴィッドは、アメリカへの留学は許可されなかったが、もう一度チャンスが来る。 父親からの強度の拘束が脅迫観念になり、それが精神異常の遠因かも知れないが、それだけが原因だと見るのではない。 イギリスでの音楽修行が印象的だった。 精神に異常をきたしたディヴィッドは、精神病院で生活するようになる。 しかし、彼女はディヴィッドを持て余す。 そこへ星占いを職業とする女性が登場し、彼は強く惹かれ結婚したいという。 人間が生活していくためには、自然の法則に服せざるを得なかった農耕社会から、人間の意志だけで生活できる情報社会へと明らかに転換している。 父親だって、子供を愛していることは人後に落ちない。 この映画は、父と子、そして良き理解者である女性の話として見がちだが、そうした個人的なものとしてのみ理解されるのではない。 人間が個人として自立し、自然の桎梏から自由になっていくことを確認すべきである。 上昇指向をもった厳父は、初期工業社会のものである。 アメリカの現代映画では、厳父は登場しない。 | |||
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