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次々と新しい趣向が繰り広げられる画面。 小気味よいテンポ、達者な役者たち、ノリのいい音楽、たちまちの2時間である。 ボブ・フォッシーに献上するとクレジットされているように、舞台ミュージカルの映画化である。 ちょっと点が甘い気もするが、星を2つ献上する。
舞台は1929年のシカゴ。ナイト・クラブの売れっ子ダンサー、ヴェルマ・ケリー(キャサリン・セダ=ジョーンズ)は妹とペアを組んで、舞台では大人気だった。 しかし、自分の夫が妹と浮気したのを怒って、2人を射殺してしまった。 同じ頃、ヴェルマのようになるのを夢見ていたロキシー・ハート(レニー・ゼルウィガー)も、不倫相手の男を殺していた。 有名なダンサーと無名のダンサーが、同時に殺人事件を起こした。 2人は刑務所で遭遇する。 ヴェルマは金にものを言わせて、女性看守長ママ・モートン(クイーン・ラティファ)を抱き込み、優雅な獄中生活を送っていた。 彼女の後ろには、敏腕弁護士のビリー・フリン(リチャード・ギア)がついており、万全の裁判体制であった。 時代はスキャンダルを欲していた。 ビリーはマスコミを操って、ヴェルマを花形にして紙面を飾らせていた。 しかし、夫のエイモス(ジョン・C・ライリー)をつかって、ビリーの弁護を獲得する。 するとビリーの演出によって、ロキシーはたちまち花形になって、新聞紙面を飾る。 紆余曲折しながらも、結局2人は無罪となる。 互いに反目しあいながらも、ペアを組んでダンサーとして成功する。 大恐慌の直前まで、殺人、情熱、名声、セックス、そしてジャズが人々の関心の的だった。 1920年代のシカゴ。殺人さえも名声への手段だった。 このミュージカルは、1975年にボブ・フォッシーによって初上映され、それ以降ミュージカルの定番となっていた。 それを現代的な問題意識も、少し混入して映画化された。 刮目してみるべきシーンが、この映画には3つある。 第1は、6人の女囚たちが、自分の罪名を披瀝しながら踊るシーン。 女性たちが如何に裏切られているか、せつせつと訴える。 ややフェミニズムに通底する臭いを感じさせながら、ダイナミックなダンスがこれでもかと続く。 押さえた色調の中で、朱色の効果がよく効いている。 第2は、ロキシーがビリーの操り人形だというシーンを、出演者たちが操り人形のように演じる。 人間がマリオネットになるのは、月並みな手法ではあるが、この演出はきわめてシャープで、主張がよく伝わってくる。 メイキャップといい、仕草といい出色である。 第3は、ロキシーの夫のエイモスが、自分は無視される存在だと、「Mr. Cellophane」を歌い踊るシーン。 ピエロの衣装をまとい、物悲しくも切なく歌う。 リチャード・ギアのダンスの下手さを除けば、全員が抜群に上手い。 女性看守長を演じたクイーン・ラティファの存在感、エイモスを演じたジョン・C・ライリーのダンスと演技、女性記者を演じたクリスティーン・バランスキーの歌。 どれをとっても絶品である。 主役を演じたレニー・ゼルウィガーの運動神経とリズム感には驚く。 「エンパイヤー・レコード」で光るものを見せたと思ったら、「ザ・エージェント」ではトム・クルーズの相手役を獲得して、今ではスターの仲間入りしている。 実に演技が上手い。 決して美人ではないし、かわい子ちゃんタイプだから、むしろ損をしていると思うが、主役をはれるのは演技の実力だろうか。 キャサリン・セダ=ジョーンズは、やや中年体型になってきたが、張りのある肌でちっとも魅力が衰えない。 彼女の滑らかな肌は白人のものではなく、アジア系の血が混じっているのではないかとすら思う。 白人離れした美しさである。 年季の入ったタップ・ダンスも見せる。 エネルギッシュな動きである。 厳しいことを言えば、彼女のタップは年季が入っているだけに、やや定型化しており、けっして今風ではない。 しかし、それでも充分に楽しめる。 刑務所は男女別だから、女性の囚人ばかりだし、ダンサーにも女性が多い。 きらびやかさは女性ダンサーの特権である。 女性の登場が多いと、フェミニズムを連想するが、この映画からはむしろフェミニズム批判のような空気も受け取れた。 原作は古いミュージカルだから、まだ女性の台頭など意識に上っていなかったはずだが、6人の女性囚人が踊るシーンには、なぜかフェミニズムの臭いを感じた。 しかし、フェミニズムの主張を肯定しているのではなく、フェミニズムと同じ主題を扱いながら、それを批判しているように感じた。 深読みしすぎかも知れないが、最近のアメリカ映画での女性表現は、旧来のフェミニズムを明らかに越えている。 ロブ・マーシャルは、この映画が初めての監督だと言うが、見事な演出と画面の作りで、アメリカ映画界の人材の豊富さを痛感させられる。 2002年アメリカ映画 |
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