タクミシネマ        ソウル・キッチン

レッド     ロベルト・シュヴエンケ監督

 「レッド」の意味が、Retired Extreme Dangerousの頭文字なんだって! 
何と安直な発想だろう。
それに消防士に変身して逃げるトリックは使われ過ぎである。
元CIAのフランク(ブルース・ウィリス)は、いまや年金生活者。
彼の唯一の楽しみは、役所に勤める年金係のサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)と、電話でおしゃべりをすることだった。

Still of Morgan Freeman, Bruce Willis and John Malkovich in Red
IMDBから
 深夜、彼は最新銃火器で武装したコマンドに、とつぜん襲われる。
となぜか、サラの家へと無断侵入する。
政府監視下にあって、電話も盗聴されていたので救いに来た、とサラに話す。
が彼女は信じない。とうぜん彼女は信じない。
だって彼女とは電話で、年金の話をしているだけなのだ。

 サラの家も襲撃されるので、強引にサラを誘拐し、猿ぐつわを掛けてモーテルに監禁。
かつての上司、ジョー(モーガン・フリーマン)をたずね、襲撃者たちの指紋から身元を調べさせる。
すると、同じグループが女性記者を、暗殺したことを知る。

 CIAのクーパー(カール・アーバン)が、上司ウィルクス(レベッカ・ピジョン)の密命を受け、モーテルからサラを連れ去ろうとしていた。
フランクはサラを奪い返し、銃撃戦とカーチェイスを繰り広げて、その場から脱出する。
女性記者の遺品から、コロンビア大学の図書館へ行く。
そして、膨大な蔵書の中のから一枚のメモを発見。

 そのメモには、グアテマラでの事件に絡んでいた名前が記されており、副大統領の命令で関連する人間が殺されていた。
記者はその秘密を知ったので殺されたのだった。
あとはおきまりのコースである。
かつての同僚マーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)や、宿敵イヴァン(ブライアン・コックス)その恋人だったヴィクトリア(ヘレン・ミレン)が登場する。

 ドタバタとドンパチが続く。
なにしろ副大統領からの命令で、CIAが民間人を殺すのだ。
こんなに大々的にやったら、たちまちマスコミ沙汰だろう。
しかし、そこは問わないことにしよう。CIAにねらわれているのだ。
GPSが24時間監視しているから、どこにいても発見されてしまう。

 CIAにねらわれるという映画は、「グリーン・ゾーン」「ボーン アイデンティティ」「陰謀のセオリー」「バーン アフター リーディング」など、前にも見た覚えがある。
こうした映画を見ていると、国家に対する信頼感が、我が国とはずいぶんと違う。
というか、経済的な意味だけではなく、個人の自立が厳しく追及されている。

  国家と正面からぶつかったら、勝てるわけはない。
そう思えてくる。
そうなのだろう。
CIAの建物のなかで、殺されたって判らない。
闇に葬られるだけだ。
この映画でも、そんな恐ろしい台詞があった。
我が国でも戦前の公安警察など、個人を捕まえて拷問するのなど、赤子の手をひねるようなものだったに違いない。

 いままで警察と対決する映画はたくさんあったが、今後はCIAと対決するのだろうか。
個人はますますバラバラになり、孤立していくのに、国家に対してはプライバシーが守れない。
何だか大変な時代になるようだ。
RED    2010年アメリカ映画
(2011.2.7)

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