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ローラーガールズ・ダイアリー
ドリュー・バリモア監督

 製作者になっていたドリュー・バリモアの、初監督作品である。
いかにも彼女らしい下品さで、妙なおかしさに満ちた映画である。
彼女のようなスタンスは、とても好きなのだが、映画製作の技術はいまだしと見た。
今後、どうなるだろう。楽しみではある。
Still of Drew Barrymore, Ellen Page, Andrew Wilson and Kristen Wiig in Whip It
IMDBから

 舞台は、テキサスの田舎町ボディーン。
アメリカの田舎町といえば、退屈の代名詞である。
主人公の女子高校生ブリス・キャベンダー(エレン・ペイジ)も、町からの脱出を夢見ている。
そして、親友のパシュ(アリア・ショウカット)と、ダイナーでバイトの日々を送っていた。

 彼女たちは隣町オースティンに出かけ、そこでローラーゲームと出会った。
なぜか判らないが、ブリスはローラーゲームに魅せられてしまった。
そこで年齢を偽り、家族に内緒で入団試験を受けると、受かってしまった。
それからは高校とダイナーのバイト、それに夜はローラースケートの練習になった。


 この手の映画の常として、まず親バレ、年齢バレ、そして、親友との確執。
ボーイフレンドの登場と、失恋。
いちどはローラーゲームをあきらめるが、最後は晴れてローラーゲームに復活という、おきまりのパターンである。
親バレが遅くて、ちょっとヤキモキしたが、親たちも何とか了解してくれる。

 「サンシャイン クリーニング」でも、主人公の窮地を救うのは父親だった。
この映画でも父親が娘に手を差しのべる。
エレン・ペイジが主人公だった「ジュ ノ」といい、「プリシャス」といい、この映画といい、最近は女性が主人公になる映画が、増えたように感じる。
スタンド アップ」など母子映画が、一時多かったが、また様子が変わってきているのだろうか。


 ローラーゲームは実際にあるのか、どうかわからない。
しかし、映画のなかで見るローラーゲームは、タフなゲームだ。
女性だけとはいえ、体当たりはもちろん、突き飛ばすこともOK。
転倒はしばしばである。
レスラー」が場末の格闘場と、レスラー仲間の友情を描いていたが、この映画も同じような雰囲気である。

 母親のブルック(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は、娘を美人コンテストに優勝させることが夢である。
そんな彼女にとって、ローラーゲームなど想像もつかない。
入れ墨を入れた女性たちが、蛮声を上げて闘うローラーゲームなど、とても許すわけにはいかない。
ローラーゲームがキャリアになるとは考えられないのだ。

 親友のパシュだって、アイヴィーリーグに進学すると言っている。
美人コンテストで優勝し、堅気の人生を歩く。
それが母親の希望である。
父親は脳天気楽に、娘を応援するが、娘の将来を考えると、どちらが良いのか判らない。
しかし、もはや娘の人生を、親が決める時代ではない。


 ローラーゲームが下品だって、良いじゃないか。
ローラーゲームの仲間たちが、暖かいコミュニティをつくっている。
シングルマザーのローラーもいるし、36歳という高齢のローラーもいる。
ポルノ映画業界を「ブギー ナイツ」が描いたように、マイナーな世界は仲間の結びつきが強い。

 マイナーな世界の暖かさを、ドリュー・バリモアは楽しんでいるようだ。
実際には、マイナーな世界は差別に苦しみ、貧乏な生活に追い込まれる。
しかし、管理社会化がすすむ現在、人間的な暖かさがどんどん失われていく。
そんな時代背景も、この映画にはありそうである。

 ブリスの先輩兼ライバルとして、ジュリエット・ルイスがでていた。
彼女は麻薬でながく療養して、その後、音楽のバンドに凝っていた。
この映画で、復活してきた。
レオナルド・ディカップリオとならんで、天才肌の役者だから、今後が楽しみである。
 「WHIP IT」
 2009年アメリカ映画 
(2010.05.26)


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