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主人公はシングル・マザーである。 2人姉妹の姉ローズ(エイミー・アダムス)は、高校時代こそチアリーダーをつとめた人気者だったが、今ではハウス・クリーニングで細々とやっている。 マック(スティーブ・ザーン)という恋人はいるが、彼には妻子がある。 しかも、離婚する気はないようだ。
マックに良い稼ぎになると、仕事を紹介される。 それは事件現場の掃除屋さんだった。 ハウス・クリーニングと違って、血が残っていたり、肉がこびりついている。 ヤワな精神では務まらない。 しかし、始めてみると、良いお金になる。 彼女は、妹のノラ(エミリー・ブラント)と一緒に、サンシャイン・クリーニングを立ち上げる。 しかし、順調には進まない。 ノラに仕事を預けたところ、火事を出してしまう。 これで万事休すというところだが、父親のジョー(アラン・アーキン)が手伝うと言いだす。 会社名をローコウスキー・クリーニングと変えて再出発するところで映画は終わる。 話はこれだけだが、さまざまなエピソードがからんで、なかなかの映画に仕上がっている。 ローズの息子のオスカー(ジェイソン・スペバック)が、私生児と言われたけど、どういう意味って聞くシーンがある。 すると、妹のノラが、私生児って未婚で生まれたってことで、超カッコイイのだという。 オスカーの誕生日に、ノラは「Bastard=私生児」って書いた特注のシールをプレゼントする。 しかも、100枚くらいあって、1年分くらいあるから、自信を持って貼れという。 これからは未婚の母こそ偉いのだし、私生児は超すすんでいるのだ、という。 自分の父親、オスカーにとっては祖父もいる場で、ナニゲに私生児を賛美するこのシーンが、この映画の白眉だろう。 母親は自殺か何か変死だったらしく、それが彼女たち姉妹のトラウマになっている。 それが掃除現場の仕事と重なって、うまく絡んで描かれる。 しかも、高校時代のスターが今ではさえない生活で、かつての級友たちは良い暮らしをしている。 それが屈折した心理になって、覆いかぶさってくる。 そうしたエピソードをけっして否定することなく、むしろ温かい目で描いている。 ローズと良い雰囲気になりそうなウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)が、片腕のない男であるのも、憎い心配りである。 バイト先を首になる冒頭のシーンから、ノラの上手い人物描写になっており、人物設定の仕方が自然である。 物語のなかで、エピソードを通した映像で、人物設定していくのは映画の王道である。 しかも、プラム・クィーンになっただろうローズの落ちぶれ方も、実に説得力がある。 マックの選んだ奥さんは、平凡な女で、むしろブスである。 高校時代には人気者だったにもかかわらず、いまでは失敗ばかりしているローズ。 切歯扼腕の日々だが、どうにもならない。 級友の妊娠パーティに招かれると、仕事があってもミエで行ってしまう。 案の定、そのあいだに任せたノラのドジから家事になる。 4万ドルの借金を背負ってしまう。 人生甘くはないが、シングル・マザーを否定しないし、母親へのトラウマを優しく描く。 リンと仲良くなってから、母親の写真だといって、おずおずと差し出すと、リンは母親はアル中だったと怒り出す。 触れて欲しくない母親だったのである。 子供が育つ環境は、年々悪くなっていく。 しかし、この映画はトラウマを抱えながらも、健気に生きる子供たちにエールを送る。 アメリカでも私生児はすでに25パーセントを超えている。 先進国ではどこでも核家族制度がくずれ、単家族化している。 そうした事実を素直にみとめ、シングル・マザーを明るく描く。 もちろんシングル・マザーの置かれている状況は厳しいが、生きている私生児やシングル・マザーにエールを送る。 お金のかかっていない映画だが、心温まる話である。 2009年アメリカ映画 |
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