タクミシネマ        シリアスマン

シリアスマン  ジョエル&イーサン・コーエン監督

 ユダヤ人監督が、ユダヤ人を皮肉って良いのだろうか?
もともとシニカルなコーエン兄弟だったが、歳をとるとルーツに戻るのだろうか。
ほとんどお金もかかっておらず、また主題もよくわからない映画だった。

Still of Michael Stuhlbarg in A Serious Man
IMDBから
 1967年、地方の大学で物理を教えるラリー(マイケル・スタールバーグ)は、テニュア(Tenure)(=終身雇用教授)になる直前だった。
終身教授になるか否かは、天と地も違いがある。
いま彼は人生の岐路に立たされていた。
ユダヤ人の彼に、次々と問題が襲う。

 ラリーの兄アーサー(リチャード・カインド)が居候している。
無職の彼は出て行く気配がない。
娘サラ(ジェシカ・マクマヌス)と、息子ダニー(アーロン・ウルフ)は、思春期特有の問題に悩んでいる。
そんな中、妻のジュディス(サリ・レニック)が別れ話を切り出し、離縁状を書いてほしいと言ってくる。
再婚相手は、友人のサイ(フレッド・メラメッド)だという。
しかも、子供たちのため、ラリーに家を出て欲しいと言われ、モーテル暮らしになる。

 ラリーが落第点をつけたアジア系学生が不満を表明、現金入りの封筒をワイロとして研究室に置いていく。
すると、学生の父親から、名誉毀損で訴えてやると抗議を受ける。
そのうち、サイが交通事故で死亡し、彼の葬儀費用を負担することになる。
住宅ローン、モーテルの宿泊代金、事故った車の修理代に加え、高額な弁護士への相談料の請求が来る。
 ラビに相談するが、なかなか良い回答は来ない。
泣き面にハチどころか、何匹もハチに刺され、もう死にそうである。
とうとう学生からのワイロに手を付けようとするところで、映画は終わる。
とにかく人生、嫌なことばかり。
本当にままならない。

 60年代の後半は、ベトナム戦争の渦中とはいえ、まだアメリカは裕福なはずだった。
また、68年にはフランスの5月革命が勃発する。
しかし、この映画は時代背景を一切描かない。
ただ問題が次々に降りかかるだけ。
まじめな彼は問題に押しまくられ、状況に流されていくばかり。

 毎度のことながら、古いものがよく保存されているのには感嘆である。
この映画でも、ファッション・小物は言うに及ばず、何十台という古い車が、V8のエンジン音をさせながら、しずしずと登場する。
しかも、3台の玉突き衝突までさせてみせる。
いくら安価な量産車だとはいえ、時代物の車を壊してしまうなんて驚くばかりである。

 ほとんど無名の俳優ばかりで、名のありそうな俳優は1人もでていない。
それでも俳優の演技は充分にアベレージに達しており、アメリカ映画界の奥の深さを感じさせる。
しかし、スターというのは一体どこが違うのだろうか。
演技の巧さばかりではないようだ。

 と言いつつも、何のために撮られた映画だか、まったく分からなかった。
一種の不条理映画だろう。
A SERIOUS MAN
2009年アメリカ映画
(2011.3.4)


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