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1936年、ヨーロッパには戦争の足音が忍び寄っていた。 目先の利くフランス人は、優勢なナチ・ドイツにエールを送っていた。 やがてヴィシー政権ができていくが、そんな時代にパリのシャンソニア劇場は、借金のかたに乗っ取られてしまった。 そして、閉館の憂き目にあう。 館主が自殺した後、ピゴワル(ジェラール・ジュニョ)が劇場の再建をはかる。 しかし、なかなか上手くいかず、失業者扱いとなってしまう。 無収入なので、子供の親権が逃げた奥さんにいってしまう。 彼は親子が離ればなれになることに耐えられない。 マドンナ(ノラ・アルネゼデール)の登場によって、復興できそうになる。 しかし、その恋人(クロビス・コルニアック)がマドンナのパトロンに殺されそうになったとき、ピゴワルがパトロンを射殺してしまう。 ピゴワルは収監されるが、シャンソニア劇場は再興されて大繁盛になる。 ピゴワルが出所してくるところで、映画は終わる。 「ラッキー ブレイク 2001」「リトルダンサー 2000」「リトル ヴォイス 1998」「フル モンティ 1997」「ブラス:1996」などなど、イギリスでは不景気の時代に、観客を元気づける映画がたくさんできた。 これらは状況設定こそ違え、「幸せはシャンソニア劇場から」と同じ主題である。 しかも、これらの話は同じ展開をたどっている。 イギリスもかつてほどの不況ではなくなったようで、前述のような映画はもう撮られなくなった。 リーマン証券の破綻で不景気になったというが、1980〜90年代というのは本当に不景気だったのだ。 失われた10年は、イギリスもアメリカも同様だったのであろう。 この時代には、不景気に負けないように、笑い飛ばす映画が撮られたが、いまではもう撮られていない。 おそらく現代のほうが、不況の厳しさは緩いのではないだろうか。 映画は本当に時代を写すものだ。 面白くない映画である。 たまたまこの映画が面白くないというなら、はずれの映画を見たに過ぎない。 だから、他のフランス映画を見ればいい。 しかし、この映画はフランスでは130万人を動員して、大ヒットしたという前宣伝である。 もし、それが本当なら、フランス人の映画の見方は、先進国の標準から完全に逸脱したと言っていい。 テンポがのろい。 見得こそ切らないが、パターン化した下手な演技。 わかりきったエンディング。 古い音楽のセンス。 まるでお金をかけた学芸会である。 フランス人がこの映画を良しとするなら、もうアメリカ映画には勝てないだろう。 そして、世界に通用する映画はフランスからは生まれないだろう。 フランスは我が国の映画界とよく似ているように見える。 映画の裏方さんたちは、充分な技術を持っている。 職人たちが生き残っているから、それなりの画面に仕立ててくる。 しかし、問題意識があまりにも後ろ向きである。 ドイツに賛同したフランス人が悪であるのは理解するが、彼等もフランス人であり、ナチを支持したのはフランス人だった。 いつの間にか、フランスは戦勝国になってしまったが、じつはフランスは戦争に勝ったことはない。 しかも、多くのフランス人はナチに協力している。 そうした過去を問わないところが、退屈な映画にしてしまっている。 声高に訴えなくとも、屈折した心理が伝わってくるものだ。 映画は娯楽である。 娯楽だからこそ、登場人物たちの微妙な心理描写が、不可欠なのである。 この映画のように、つるっとした人間の性格設定では、観客たちが感情移入できないのだ。 どんなに小規模な映画でも、大規模なハリウッド映画でも、映画の基本は変わらない。 この映画は物語の作り方が、平板に過ぎる。 訴えたい主題に向けて、映画は徐々に盛り上がっていき、最後に種明かしをする。 起承転結といった山がないと、テンポがのろいので、ほんとうに退屈になってしまう。 一体フランス人はどうしてしまったのだろうか。 原題は「Faubourg 36」 2008年仏.チェコ.独映画 |
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