タクミシネマ   レッド・クリフ−赤壁の闘い

レッド・クリフ−T 赤壁の闘い    ジョン・ウー監督

 ジョン・ウーは100億円の制作費を、アメリカ、中国、日本、台湾、韓国からかき集めた。
彼はこの映画の監督はもちろん、製作から脚本まで1人でこなしている。
「三国志」がネタとはいえ、凄い人だ。
しかし、お金を集める力と、映画の内容とはまったく関係ない。


レッドクリフ PartI(日本語吹替版)
 前後2部仕立てになっていて、現在公開されているのは、第1部であり序盤の話である。
それでも充分にお金がかかっている。
第2部になると、水軍が主な戦いになるから、もっとお金がかかっているだろう。
気が遠くなりそうだ。

 映画は娯楽ではある。
しかし、これだけお金をかけた壮大な駄作は、見る人にいったい何をもたらすのだろう。
ラースと、その彼女」のように超低予算の映画も、充分に面白いし、本サイトでは星を獲得している。
お金をかけることを悪いというわけではないが、何だか考え込んでしまうのも事実である。


 CGもふんだんに使っており、我が国の映画事情から見ると、ほんとうに夢のような映画である。
しかし、この夢はあまり羨ましくない。
良い映画というのは、必ずしもお金をかけた映画とはかぎらないし、CGを使わなくても面白い映画は撮れる。
むしろ、CGの多用は画面を希薄にし、物語への没入を妨げてしまうこともある。

 話は次のようなものである。
強大な兵を率いる曹操(チャン・フォンイー)が、劉備(ユウ・ヨン)をうち破る。孫権(チャン・チェン)は、劉備から同盟をもちかけられる。
迷ったあげくに、孫権は同盟を結んで、劉備にたちむかう。
それが主な話で、それに孔明(金城武)や周瑜(トニー・レオン)がからみ、周瑜とその妻(リン・チーリン)のベッドシーンが展開される。

 ジョン・ウーという監督は、「フェイス オフ」や「ミッション・インポッシブル-2」を撮っており、いまやアメリカ映画の監督といってもいい。
とくに「フェイス・オフ」は、当サイトも星を献上している。
にもかかわらず、「レッド・クリフ」はまるで途上国の映画である。

 「三国志」をネタに使っているのだから、話が単純なのは良いとしよう。
しかし、映画の展開が、まるで歌舞伎なのだ。
ストーリーの展開を止めて、各有名俳優のアクションを見せる。
さまざまなアクションが次々に挟まれる。アクションのたびに物語が止まってしまう。
アクションが物語の流れを切断している。

 アクションがいわば見得を切るように、断片的に使われいるので、展開に自然な滑らかさがない。
同様に周瑜とその妻(リン・チーリン)のベッドシーンは、取って付けたようで不要である。
しかも、トニー・レオンは「ラスト・コーション」で、濃厚なベッドシーンを見せており、イメージが重なりすぎる。

 それにしても、ジョン・ウーはアメリカでは緻密な展開の映画を撮っていながら、中国映画になると流れを止めてまで、なぜアクションさせてしまうのだろうか。
オールド・ボーイ」も長いアクション・シーンがあったが、あの映画では決して物語の流れを止めていない。
アクションを見せるためのシーンを撮りながら、どうしてこうも違うのだろうか。


 スザンネ・ビエール監督のように、同じ監督が本国で撮るのと、アメリカで撮るのとでは、作品に違いがでるのはあり得る。
しかし、彼女の場合は、作風まで変わってしまうというわけではない。
ところが、ジョン・ウーの場合には、物語の作り方が変わってしまうのだ。
ちょっと理解できない変化である。
2008年の米.中.日.台.韓映画

TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

 「タクミ シネマ」のトップに戻る