タクミシネマ          ズーランダー


ズーランダー   ベン・スティラー監督

 不思議な雰囲気のお笑い映画で、何となく「オースティン・パワー」に似た感じがする。ベン・スティラー扮する男性モデルのデレク・ズーランダーが、奇妙な出来事に巻き込まれるという話し。ズーランダーは身体こそスタイリッシュだが、頭のほうはまるで駄目という設定。対するライバルのハンセル(オーウェン・ウィルソン)も、身体だけの脳タリンである。

ズーランダー [DVD]
公式サイトから

 コミック映画の設定は、奇想天外なほど面白い。どんな突飛な設定でも、観客は許容する。しかし、ファッション・モデルこそ、殺し屋にぴったりだというのは意外性があって良いが、ファッション・ショーにきたマレーシアの首相を暗殺するというのは、平凡でちょっといただけない。

 マレーシアで、労働者保護の政策を掲げる首相が選ばれた。それを見たアメリカ資本が動く。マレーシアに縫製基地を持つアパレル業者は、子供労働の搾取ができなくなるので、新首相を暗殺するというのだ。彼がアメリカに来るので、その時を狙うという。しかし、マレーシアの首相の姿は、まるで百年前の中国人である。人種的な差別とは言わないまでも、もう少し神経を使っても良いだろう。


 「リアリティ・バイツ」で若者の生態をとらえ、「ケーブル・ガイ」ではシャープな時代認識を見せたベン・スティラーだが、最近の彼の映画は問題が多い。出演作としても「メリーに首ったけ」や「ミート・ザ・ペアレント」など、身体の欠損や障害を笑うものが多く、あまり馴染めない。出演者だから演技だけで、内容には口が挟めないのかと思っていたが、この作品でも身体にまつわる笑いや、差別意識のくすぐりを狙っているような感じがした。

 ベン・スティラーは達者な役者だとは思うが、何か馴染めなさがある。映画自体は、多くの映画からのパクリが連続し、それはそれなりに楽しめはするが、笑えない。ただ、彼とハンセルがコンピューターの操作が判らずに、いらいらしてコンピューターのまわりを廻る様は、「2001年宇宙の旅」の冒頭のパロディで面白かった。パクリの連続として、もっと徹底したらどうだろう。

 映画やファッション界から、大勢のカメオ出演をえて、華やかな場面を演出しているが、主題がないので散漫になっている。コメディは決して嫌いではないし、むしろ笑いというのは高尚なものだとはおもうが、こうした笑えないコミック映画をみるとちょっと感想に詰まる。

2001年アメリカ映画   

TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

「タクミ シネマ」のトップに戻る