タクミシネマ　　　　　　　　メリーに首ったけ

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メリーに首ったけ [DVD]

　ロングアイランドでの話。
メリー(キャメロン・ディアス)という美女がおり、彼女が高校の卒業式のあとのパーティに誰と出席するかが、学校中の話題だった。
彼女にはかっこいいボーイフレンドがいたが、主人公のテッド(ベン・ステラシー)がメリーの弟ウォーレン(W．アール・ブラウン)を助けたことから、彼女はテッドと仲良くなる。
メリーの弟は知恵遅れだったが、テッドもメリーも彼と仲良かった。

　テッドは、パーティにメリーと二人で行くことになり、彼は勇んでメリーを迎えに行く。
しかし、彼女の家でトイレを借りたところ、男性自身がチャックに引っかかって、彼は病院行きとなる。
この顛末は、テッドのドジぶりを描いているのだが、主題であるメリー探しとの続きが薄い。
ここはもっとあっさりとやった方がいい。
下ネタはさらっとやるところが良いので、しつこくやられると、うんざりである。

　その後メリーはマイアミに引っ越して、音信不通になる。
それから１３年、テッドはメリーが忘れられず、独身のままである。
友人のドム(クリス・エリオット)に打ち明けたところ、友達のヒーリー(マット・ディロン)がマイアミに行くから、彼にメリーの居所を捜させようという。
ヒーリーはメリーの居所を探し当てるが、彼は自分がメリーに惚れ込んでしまい、テッドには大嘘を教える。
彼は会社を辞めて、自分がマイアミに引っ越してメリーをくどき始める。

　他にもメリーに首ったけの男がおり、その男も本当はピザのデリバリーボーイだが、足の悪い建築家を装っている。
この建築家が松葉杖をついており、床に物を落とすとなかなか拾えない。
障害者が床の物を拾う様子を、嘲笑的におかしく描くのは、趣味が悪いとしか言いようがない。
日常生活をしている障害者は、不利を克服する技術を身につけているはずで、だいたい本物の障害者が、床に落ちた物を拾えないはずがない。

　この映画には何人もの障害者が出てくるが、障害者に対して寛容に対応しようとする社会を、批判する意図があるようだ。
ヒッチハイクで乗せた男は精神病の殺人犯。
メリーの弟は知恵遅れで、耳に近づくと狂暴になる。
上司の弟は車椅子の意地悪人間。
顔に吹き出物ができるテッドの同僚ドムは靴フェティシュ。

　障害者は現実にいるのだから、こうした人間を登場させるのは良い。
しかし、主人公は健康で健常者や美人。
主人公の健常者たちが、障害者に手をさしのべるという温情の差別構造そのままである。
障害者の社会進出のため、様々に多くの税金が使われるが、それが逆差別だといっているようだ。
これではこの監督のセンスを疑う。

　メリー自身が整体のセラピストで、そこそこの地位にありながら、人間を見る眼は全くない。
ただ可愛いだけの女の子である。
２８歳になって、あんな性格だなんて考えられない。
この監督は、女性は可愛くあれと考えているようだ。
ヒーリーにしてもピザデリバーリーボーイにしろ、嘘で固めた人間でありながら、彼女は簡単に騙されてしまう。
コミックだから許されるのではなく、騙されるには騙されることを納得させるキャラクターが必要である。
あまりの間抜けなメリーに、途中でうんざりしてくる。
1998年アメリカ映画。