タクミシネマ        ザ・ファイター

ザ・ファイター    デヴィッド・O・ラッセル監督

 冒頭に実話だ、と文字が入る。
1980〜90年代に活躍したプロボクサー、ミッキー・ウォード(マーク・ウォールバーグ)とその兄ディッキー・エクランド(クリスチャン・ベール)の物語だと言うから、この頃から家族は分解していたのだ。
なにしろ、兄弟が9人いて、その父親が様々なのである。

Still of Mark Wahlberg and Christian Bale in The Fighter
IMDBから
 主人公のミッキーと副主人公のディッキーとも、年のはなれた異父兄弟なのだ。
にもかかわらず、とても仲が良い。
ミッキーは小さな時から、兄にボクシングを習って、兄を尊敬していた。
兄だってボクサーとして、相当良いところまで行ったのだ。
麻薬がすべてを変えてしまった。

 兄は麻薬をやって、いわばゴロツキになっていた。
しかし、自分ではミッキーのコーチ兼トレーナーのつもりでいる。
そのうえ、マネージャー役の母アリス(メリッサ・レオ)がいけない。
ミッキーを伸ばすように対戦相手を組まずに、強い相手と当てて連戦連敗だった。
兄が窃盗の罪で刑務所に入っている間に、恋人シャーリーン(エイミー・アダムス)と出会い、新しいコーチをみつけて芽が出はじめた。

 シャーリーンは当然のこととして、母親のアリスと不仲である。
7人の小姑を引き連れた母親の急襲に合うが、彼女はミッキーを守る。
しかし、兄のディッキーが出所してくると、ミッキーはディッキーのコーチを望む。
ここでシャーリーンとの仲も破綻するかと思うが、刑務所で麻薬が抜けた兄は立ち直っていた。

 私生活はシャーリーン、ボクシングはディッキーとの区分けが成立し、ミッキーの快進撃が始まる。
とうとう世界チャンピョンにまで駆け上がる。

 マサチューセッツ州の労働者の街ローウェルから、世界チャンピョンが生まれたのだ。
それは伝説になるだろう。
しかし、映画としては特別な主題を展開しているわけではない。
見るべきはクリスチャン・ベールの演技だろうか。
「マシニスト」ほどではないが、グッと体重を落として、ボクサーを演じている。
ミッキーを演じたマーク・ウォールバーグも、映画のなかで太ったり痩せたりしていたので、今では体重のコントロールは当たり前になったのだろう。

 クリスチャン・ベールは「アメリカン サイコ」でも鋭い演技を見せていたが、この映画でも自己中で面倒見の良い男を充分に演じていた。
若いせいもあるのだろうが、やや騒々しいキャラクターをあたかも地であるかのように見せていた。

 母親を演じたメリッサ・レオも、助演女優賞でオスカーを受賞したが、こちらの演技はよく判らなかった。
クリスチャン・ベールと似たタイプの演技だったからかも知れないが、絶叫が過ぎるように感じた。
実話だと言うが、それにしても、こんな母親と兄を持ったら、さぞ大変だったろう。
そうした中でも、家族愛はきわめて強く、家族の繋がりについて考えさせられた。
原題は「THE FIGHTER」  2010年アメリカ映画
(2011.4.6)


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