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美人で仕事ができる。 あと足りないのは、恋人だけ。 本人も恋人が欲しくてたまらない。 ネットで、口づてで、恋人探しをしている。 しかし、どうしても恋人ができない。
アビー(キャサリン・ハイグル)は敏腕プロデューサーである。 朝から、いくつもの仕事をテキパキとこなして、部下からも信任が厚い。 恋人捜しに、やっきになるが、ダメ。 デートに行っては見るが、外れの男ばかりである。 担当する番組の視聴率が下がり始めた。 会社は、他局の毒舌パーソナリティであるマイク(ジェラルド・バトラー)を雇い入れ、彼女の番組のアドバイサーにすえる。 男女の生々しい話が専門だったマイクは、たちまち彼女の欠点を見抜く。 彼女は教科書に出てくるような、理想の男を捜しているから、見つからないのだという。 女性が望む男性は、理性的で紳士的で、下品なことは考えずに、背の高い美男子なのだ。 しかし、どんな男性でも、10分間に1度は下品なことを想像する。 男性は女性に理性など要求しておらず、肉体的な魅力に参ってしまうのだ、とマイクは言う。 マイクのいうことは、もっともだと思う。 男性だって女性だって、一目惚れするのは外見からである。 格好いいスタイル、明るい振る舞い、茶目っ気のある言動などが、他人を引きつける。 異性ともなれば、セックスアピールが大事だ。 シェクスピアに対する解釈力に憧れはしないし、カントへの理解力に惚れたりしない。 外見に一目惚れするのだし、恋の道では、理性は後から付いてくるものだ。 女性たちは格好いい男性を求めながら、知的で理性にあふれた男性を求めている。 こんな男性はいない。 男は皆スケベだし、単純なのだ。 とりわけ、高学歴の男性は、女性に仕切られるのを嫌うし、従ってくれる女性を好む。 しかし、稼ぐ女性たちは、みな仕切屋だし、ズケズケと物を言う。 これでは男女が合わないはずだ。 マイクは単純な男の性を、アビーに指導する。 すると見事にコリンが引っかかる。 しかし、本命はマイクだったという展開は、最初から見えている。 それにしても、女性たちの嘆きは、相当なものだ。 台頭し稼ぐ女性は、みな学級委員のような、仕切り屋タイプが多い。 こうした映画の主人公たちは、みな高学歴で、高収入を得ており、普通の男性たちが羨むような境遇にいる。 つまり、アメリカではそうした地位にまで、女性も付けるようになったということだ。 最近のアメリカ映画は、ハイソな女性ばかり描いているように感じる。 ハイソな社会では、たしかに女性が男性と肩を並べ、ブリブリと活躍しているだろう。 そこでは、女性たちが男日照りに陥っている。 女性の台頭は、女性が望んだことであり、男性支配を打破した以上、孤独になるのは不可避なのだ。 近代になるときに、男性たちは貴族をうち倒した。 その結果、神が死んで、エスタブリッシュメントが崩れ、男性自身も価値の喪失に苦しんだ。 既存の支配構造を崩してしまうと、新たな価値観を確立しなければならない。 それはどんな社会でも同じである。 女性は保護される存在から、自立したのだから、女性自身の価値観を確立する必要がある。 しかし、貴族支配の打倒と違って、男性支配の打倒は、生理的なメカニズムが絡むがゆえ。 だから、もっとはるかに複雑になる。時間がかかることだろう。 しかし、高学歴、高収入の女性ばかりではない。 庶民の女性たちは、また肉体労働に従事する男性は、マッチョな男性とフェミニンな女性という構造を好み続けるだろう。 とすると、マイクが言うように、古い男性が多いのだから、ハイソな女性は、ますます男日照りを嘆くことになるかも知れない。 原題は「The Ugly Truth」である。 Uglyはふつう<醜い>と訳されるはずで、<不都合>という意味はあるのだろうか。 ずいぶんと意訳が強い感じがする。映画の内容からすれば、すなおに醜い事実としたほうが良い。 男性監督が撮っているとはいえ、やはり男性批判の映画であり、女性批判の映画でもあるのだから。 オーストラリア人監督だからか、アメリカ人にたいして、ちょっと皮肉っぽい。 2009年アメリカ映画 |
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