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宇宙でスペース・シャトルが、何かに衝突する。 衝突したのは、謎の宇宙細菌だった。 バラバラになって地上に破片が落ちる。 人間に寄生して、人間を改造してしまう。 つぎつぎに人間を襲い、人間から喜怒哀楽を奪っていく。
この映画は、不思議なことに乗組員の安否には、まったく触れない。 ふつうなら、まず人命が問題になるだろう。 このあたりに、すでにリアリティの欠如があり、丁寧な作品ではない感じが漂っている。 キャロル(ニコール・キッドマン)は、バツイチの精神科医で、子供のオリバー(ジャクソン・ボンド)をことのほか可愛がっている。 政府の細菌専門官の元夫のタッカー(ジェレミー・ノーサム)とは、電話で対応するだけ、子供は彼女の元にいた。 彼女は不審に思いながらも、タッカーにオリバーを預ける。 しかし、タッカーは宇宙からの細菌に冒されて、喜怒哀楽のない不気味な人間になっていた。 あとはお馴染みの展開である。 キャロルの恋人ベン(ダニエル・クレイグ)と、同僚のガイアーノ医師(ジェフリー・ライト)がからんで、細菌撲滅に向かう。 「マーズ アタック」と「フライト・プラン」を掛け合わせたような映画で、いま流行の母子物である。 現代の母子物では、母親になる女性が専業主婦ではない。 キャロルは精神科医で、「フライト・プラン」のカイル(ジョディ・フォスター)と同様に、高等教育を受け、きわめて裕福である。 映画のなかで、元夫が「君にとって一番大切なのは、まず子供、次に仕事、最後がボクだ」というが、これが現代女性の本音だろう。 高等教育を受けた現代女性たちは、並の男性以上にかしこく、男性以上の稼ぎがある。 完全に自立した女性にとって、男性は別の人格であり、自分の手の内に入れることはできない。 子供は大切なオモチャである。 母親が思い入れを入れれば、子供は素直に返してくれる。 母子映画の子供たちは、そろって小学生低学年で、すでに怪獣的な子供期は過ぎている。 おしめも取れているし、夜泣きもしなければ、体調が激変することもない。 女性が愛玩するにはちょうど良い。 映画としては、理詰めの展開が破綻している。 眠ると細菌が力をもち発症するとか、感染していた期間の記憶はなくなるとか、ご都合的にすぎる。 細菌に冒された人間は、喜怒哀楽を失うので、平和を愛し争いごとをしなくなる、というが、それなら非感染者を手荒く扱うのが解せない。 喜怒哀楽があるから、人間は争いが絶えないといい、映画の主題である喜怒哀楽があるからこそ人間だというのが、あまり説得力をもってこない。 細菌に冒された状態はファッシズムだから、もちろんキャロルが逃げるのは良いのだが、その説得力が弱い。 恋人のベンまで感染しているにもかかわらず、なぜ彼女があれほどまでに拒否するのか。 細菌に冒された状態は、ファッシズムだからいかんというのでは、ただ前提を繰り返しているだけだ。 北朝鮮などがチラッとでたりして、製作者たちの意図は分かるのだが、悪いものは悪いと言っているようで、ちっとも論理的ではない。 しかも、珍しいことにニコール・キッドマンの演技が、絶叫型になっており、上手の手から水がもれた感じである。 精神科医のキャロルの使っていたパソコンはマックだったが、マックが業務用に使われるようになったのだろうか。 2007年のアメリカ映画 (2007.10.23) |
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