タクミシネマ                  マーズ・アタック!

 マーズ アタック   ティム・バートン監督

 悪い宇宙人=火星人が襲来する話しで、 それをコミカルにみせている。
つまらなかった「インディペンデンス・デイ」と同じ主題だが、この映画ははるかに面白くみることができる。


 宇宙人が地球侵略のために襲来する話しは、「地球防衛軍」など1950年代には良くみられたが、「E・T」などに見られるように最近では宇宙人は悪者ではなくなっていた。
それが悪い宇宙人の登場とは、時代が変化する前兆だろうか。

 映画の初めに、宇宙空間を火星人の円盤が、無数に編隊をなして地球に向かうシーンがある。
この場面は三次元の深い空間を感じさせ、圧倒されるほどに美しく壮麗である。
コンピューターが作り出す場面だと思うが、今までなら決して見ることができなかったシーンなだけに、映像技術の進歩に感動する。

 コンピューターは単なる技術であって、あのシーンを見せるに足るものとしているのは、製作者たちのセンスであることはもちろんであるが、とにかくわくわくするシーンである。

 地球に来た。
それがアメリカに来たと扱われるところが、日本人としては残念ながら、アメリカ映画である。
「インディペンデンス・デイ」では、地球の独立とアメリカの独立が重ね合わされており、アメリカ人でない者にはやりきれなかったが、それはこの映画でも同じである。
この映画では、アメリカ大統領の友達はフランスの大統領である。

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劇場パンフレットから

 アメリカ大統領は、火星人を平和の使者だと思いたい。
その願望を前提に、友好的な歓迎式を準備する。
火星人はネバダの砂漠に着陸するが、まったく友好的ではない。
出迎えた地球人と銃撃戦となる。次にアメリカ議会に大使がくるが、ここでも議員を皆殺しにする。

 とにかく火星人は人を殺し、地球を破壊して廻る。
優柔不断な大統領は何もできない。
火星人のほうが圧倒的に文明が進んでおり、地球人は抵抗できない。
火星人は地球人をからかいながら、地球を侵略する。
ところが、ヨーデルを聴くと突然頭が破裂する。
それが偶然に判って、何とか火星人は撃退される。

 火星人にはアキレス腱があり、あわや地球が侵略される最後に、それが決定的な原因になり、地球は救われるこのエンディングは見る前から想像がついていた。
だから、話しの最後に興味があったわけではない。
とにかく監督が、火星人襲来を主題にしたコミックを、さあ笑ってくれと差し出したので、笑いましょうと見に行った。
作りはキッチュなB級映画、それも異常なくらいにお金をかけた偉大なB級映画である。

 B級映画にすさまじい額のお金をかけて、楽しもうとするのは今のアメリカが得意とするところである。
アメリカ人自身を揶揄し、皮肉っぽく笑い飛ばす精神は、すでに大人の領域である。
話しの展開もはちゃめちゃなもので、火星人に捕らえられ首だけになった男女が愛をささやく場面などグロテスクである。
しかし、子供や年寄り、そして黒人などの扱い方を見ていると、この監督は心の優しい感じがする。

 平和主義者への皮肉、選挙しか関心がない優柔不断な大統領、武力の無力さなどなど皮肉る対象はたくさんあるが、頭を空っぽにして素直に楽しんだほうがいい映画である。
映画としては、伏線の張り方が荒く結末が予測できてしまい、筋の展開が雑だが、あまりの馬鹿馬鹿しいキッチュさにすべてOKとなってしまう映画である。

 出演者もアンソニー・ホプキンズ、グレン・クローズやアネット・ベニングなどの有名俳優がでているが、彼らもこの映画に出演することを楽しんだに違いない。
ティム・バートン監督は、宇宙映画が大好きらしく、古い宇宙映画を連想させる場面がたくさん登場していた。

1996年のアメリカ映画


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