タクミシネマ        オーシャン 13

 オーシャン 13   
スティーブン・ソダーバーグ監督

             オーシャンズ 12      オーシャンズ 11

 このシリーズも3作目。難しいことを言わずに、ゆったりと楽しめる活劇である。
しかし、細かい伏線や小さな仕掛けがたくさんあり、ゆったりしすぎると面白い部分を見逃してしまう。
最近のハリウッド映画は、娯楽を楽しむのに、細心の注意を要求する。
ちょっと油断していると、話が何が何だか判らなくなる。

imdbから

 犯罪集団オーシャンズの一員であるルーベン(エリオット・グールド)が、カジノ経営者バンク(アル・パチーノ)の裏切りによって、大損害を被る。
そのうえ、心臓病の発作に襲われて、瀕死の目にあう。そこで、ダニー(ジョージ・クルーニー)はメンバーを集めて、バンクの新カジノ・オープンを邪魔しようとする。

 いつものメンバーにテリー(アンディ・ガルシア)を加えて、綿密な計画のもと、新カジノを襲う。
と言いたいけれど、予定外のことがたびたび発生して、計画は頓挫しそうになる。
それをひとつひとつ乗り越えて、なんとか計画を遂行する。
話の結末はわかっており、展開をうまくみせることに監督の手腕がかかっている。

 ところで、車に乗るところと降りるところだけを撮して、車で移動したことを表現するのが、先進国の映画だといった。
途上国の観客は、これでは移動したことが判らない。
移動中の車中のシーンがないと、乗って降りただけの表現になってしまう。
それと同じことを、この映画は飛行機でやってみせた。

 自家用飛行機に乗るところを見せ、次にはタラップから降りるシーンを見せる。
移動中のシーンは全部省略している。
これで飛行機が飛び立って、何千キロも飛んだことを伝えている。
それでも、観客は移動したことを理解する。
この映画は、大がかりな話の割には、仕掛けが細かい。
筋を追いかけていくには、細心の注意が必要である。

 地下を掘るシールド機を手配する会話だけから、機械の運搬やセットなどいっさい省いて、いきなり地中のシールド機の内部にとぶ。
その間には、他のシーンがはさまれており、2つのシーンは観客の想像力につながせるのである。
映画を見慣れていないと、話についていくのが大変だろう。

 最後にテリーが裏切ったシーンも、宝石を盗んだ男がちらっと登場するだけで、これと言った説明は一切ない。
テリーの取り分を、子ども支援グループに寄付したというだけで、いきなりテリーのテレビ・インタビューにとんでいる。
こうした説明の省略は、リズミカルなテンポを生みだしはするが、アメリカ的地方性を増加させているように感じる。

 時間の進みが、ますます早くなっているアメリカでは、どんどんと説明が省略されていく。
アメリカにいれば早さになれて、省略されても判る。
そして、それについていかなければ、アメリカで生活ができなくなる。
しかし、話の展開があまりにも早くなっていくと、アメリカ以外はこの早さについていけなくなるだろう。

 1960年代の名作でも、いま見ると展開が鈍くて、イライラすることが多い。
ましてや、それ以前の名作となると、スローモーションを見ているようだ。
急速に進展する情報社会に生きる人と、農耕社会や工業社会に生きる人では、問題感心が違いすぎて、同じ映画を同じように理解することが難しくなっている。

 これは話の展開だけではない。
よく注意すれば、展開にはついていけるだろう。
むしろ、主題の違いに、想像が届かなくなり始めているように感じる。
1995年に公開された「リーヴィング ラスヴェガス」という映画があったが、あの映画が描いた主題は、我が国では理解されなかったのではないか。


 最近の映画でいえば、「ミリオンダラー ベイビィ」なども、トンチンカンな評論が多かった。
アメリカでオスカーをとっている映画が、我が国で理解されないとなると、何と言えばいいのだろうか。
  2007年のアメリカ映画  (2007.9.18)

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