タクミシネマ  オーシャンズ 12

オーシャンズ 12   スティーブン・ソダーバーグ監督

 全作の登場人物が11人だった。
今回は1人増えて12人になったので、オーシャンと12人の仲間ということになった。
11人の顔ぶれは変わらないが、新人として登場するのはラスティー(ブラッド・ピット)の元恋人で、EUの捜査官のイザベル(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)である。

オーシャンズ12 [DVD]
公式サイトから

 3年前ベネディクト(アンディ・ガルシア)から、大金を強奪したダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)たちだが、ベネディクトからその金を返却するように迫られる。
すでに金を使い果たした彼らは、再結集してヨーロッパに渡って新たな犯罪計画に挑む。
ヨーロッパ一の盗人ナイト・フォックスことヴィンセント(フランソワ・テュリュアー)との腕比べなど、仕掛けはそれなりに工夫されている。
しかし、2作目は失敗のジンクス通り、散漫な作品になってしまった。

 群像劇ならいざ知らず、謎解きで12人の主人公というのは、やはりちょっと無理である。
普通の映画は、登場する有名俳優は3人で、ヒロインとヒーロー、それに敵役といった布陣である。
この映画はジョージ・クルーニーをはじめとして、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、女性陣にはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ジュリア・ロバーツと、主役をはれる俳優がたくさん出演している。
そのため、各人を満遍なく画面に登場させると、物語への集中がそがれてしまう。

 前作にあった小気味の良いテンポが失われ、物語を追うので精一杯といった感じで、それぞれのエピソードがこなれていない。
2時間でこれだけの多人数を、謎解きへと収斂させるのは、至難の業であろう。
後半で大きな役割を演じるナイト・フォックスの位置付けも不充分だったし、ライナス(マット・デイモン)の親との関係も、おもしろくはあったが唐突な感じが否めない。

 仕掛けに大金を投じる作品が多いなか、出演者にこれだけ金をかける作品も珍しい。
主役級の俳優をこれだけそろえれば、出演料も大変な金額だろう。
映画は娯楽だから、スターを見に行きはする。
しかし、スターがスターとなれるのは、物語がしっかりしているからで、役者で見せるのはアイドル映画以外は無理である。

 映画はしっかりした物語構成と、密実に書き込まれた脚本が、もっとも大切である。
この2つが確定すれば、自ずと主題も鮮明になるし、説得力も生じてくる。
仕掛けや出演者に頼った映画作りは、どこか歪な感じがする。
 2004年アメリカ映画
(2005.01.25)

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