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「羊たちの沈黙」が評判を取ったので、第2作、第3作と映画化された。 今回はその第4作目である。 「007」の誕生の種明かしと同じで、残酷非道で猟奇的なハンニバルが、なぜ生まれたのかの背景を描いている。
第二次大戦下のリトアニア。 ナチの侵攻により、レクター家は山小屋に逃亡した。 しかし、そこでハンニバルは、両親を失った。 そのうえ、リトアニア兵に妹を殺されて、しかも、食べられてしまった。 終戦後、ハンニバルは孤児院へ送られる。 その孤児院は、かつては自分の家だった。 彼は脱走し、パリへと向かう。 パリの叔父は他界していたが、妻である叔母ムラサキ(コン・リー)がいた。 彼女の庇護のもと、すくすくと育っていくが、 戦争中の体験が彼の性格を変えていた。 優秀だったハンニバル(ギャスパー・ウリエル)は、やがて医学部に進学する。 そして、妹を殺した連中を捜し出して、復讐のために殺すことを始める。 話はただこれだけである。 このシリーズは、第1作の「羊たちの沈黙」が、ハンニバルが獄中にいる形で唐突に始まったので、映画としてはその説明にシリーズ化されたように感じる。 だから、どうしても後付になっており、衝撃力が弱い。 第2作「ハンニバル」と第3作「レッド ドラゴン」(原作はこれが第1作)は、まだ主題があったが、この第4作ではハンニバル誕生の背景説明に終始している。 こんなに過酷な体験があったから、彼は大悪人になったという展開になっている。 彼の異常な性格形成に説得力を持たせようとすればするほど、論理整合性を追求せざるを得ず、その結果、彼は悪人ではなくなってしまう。 いまでもナチ・チェイサーがいる白人社会では、戦争犯罪人への復讐といえば、彼の殺人はは正義の行動になってしまうだろう。 個人による復讐は許されないといっても、国家による復讐が許される手前、説得力は弱い。 絶対の悪人が主人公になる映画は、きわめて珍しいから、もっともっと悪人性を徹底して欲しかった。 論理整合性など追求する必要はなかった。 殺人に快楽を感じる性格が、特異体験から形成されたとしても、誰もが殺人快楽を追求するわけではない。 むしろ快楽殺人を徹底して、ドラキュラのような話のほうが、意外性があって面白かったのではないだろうか。 話のディテールには、いくつか興味深い点はあったが、とりたて論じるほどではない。 復讐する相手の娘が、盗んだ妹のブレスレットをしていたり、偶然が多かった。 また、レディー・ムラサキが誘拐されて、交換交渉になるなど、展開の先が読めてしまった。 手が見えるのは、死体の手だろうなと判ってしまったり、むしろトリックが安直である。 日本人女性の陰部は横向きに付いている。 これが日本人蔑視の科白になっていたが、日本人女性が世界中で活躍している現在でも、こんな科白が通用しているのだろうか。 1970年以前には、アメリカでもこの科白が聞かれたが、日本人女性の世界進出によって実体験が広まったはずだから、この科白は事実ではないと証明されたと思う。 どうも説得力に欠ける。 若きハンニバルが、日本人の叔母から剣道の手ほどきを受け、左利きの彼は左前で刀を握っていたが、あれはご愛敬だろう。 しかし、ちょっと気になったのは、日本人の影響を受けたので、不可解な殺人鬼になったのだ、というメッセージが隠されていたのだろうか。 そうではないと思いたいのだが、日本女性の陰部の話と重ねると、少し気になった。 2006年の英.チェコ.仏.伊映画 (2007.5.8) |
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