|
||||||||
|
同じ監督が1999年に撮った「アメリカン ビューティ」は、核家族崩壊後のあらたな旅立ちを描いて、出色の映画だった。 「アメリカン・ビューティ」が描いた時代は、映画が製作されたのと同じ時代に設定されていた。 この映画は、核家族ができつつあった1950年代を、現代から描いている。
1950年代の専業主婦は、自信満々に輝いていたはずで、専業主婦の破滅は1960年代になってからである。 それにしても、なぜ今時こんな映画が撮られたのだろうか。 「クレーマー、クレーマー」から「カジノ」(1995)まで、こうした映画はすでにたくさん撮られている。 どうして? という疑問だけが残った。 若い時代、2人の男女が出会った。 2人は結婚し、子供をもうけた。それを機会に郊外の美しい住宅に引っ越した。 ここまでは話の導入である。 夫のフランク(レオナルド・ディカプリオ)はノックス社に勤め、郊外電車で職場に通っていた。 エイプリル(ケイト・ウィンスレット)は専業主婦として、子育てなど家事に専念していた。 若いときのエイプリルは、女優になるための勉強をしていた。 しかし、現在の彼女に職業はなく、手応えのある仕事がなかった。 そのため虚しい日々が過ぎていった。 虚しい家事に専従する日は、彼女の精神を歪ませていった。 市民劇をやってはみたが、惨憺たる結末で、かえって彼女は落ち込んでしまった。 それにたいして、フランクは会社人間へと、順調に育っていた。 半年くらいなら、蓄えがあるから暮らせるという。 フランクもそれに同意するが、そんなとき、エイプリルが妊娠する。 そして、フランクに昇進の話が舞い込んでくる。 中絶が非合法だった時代、こうなれば、もう話は見えている。 男性の生き方は、仕事に邁進し、稼ぎを家に持ち帰ること。 女性の生き方は、家事労働にはげみ、子育てに奉仕すること。 仕事に専念し、大きな稼ぎをもたらす男性は、賛美された。 そして、家庭を守る女性は、手厚く保護された。 やがて性別役割分担が、男女をしっかりと規制してくる。 男性は仕事の手応えが、おおきな生き甲斐になった。 しかし、女性は家事から、生き甲斐を得られなかった。 この映画でも、エイプリルは手応えを求めて、市民劇を組織するが大失敗である。 若いときには、男女が同じように夢を語ったが、女性には今や家の床磨きだけが仕事だった。 フランクが昇進して出社する朝、彼女は完璧な専業主婦を演じてみせる。 彼を送り出した後、彼女は自分で堕胎を試みる。 しかし、失敗して病院に担ぎ込まれ、出血が止まらずに死んでしまう。 1950年代のアメリカは、世界中で最も輝いていた。 国中に張り巡らされた高速道路、フルサイズの車、郊外の美しい住宅、清潔な環境などなど、世界中が羨む生活を謳歌していた。 1960年代になっても繁栄は残り、アメリカの飛行場にはクレオソート臭いがただよい、清潔な国に来たと思わせてくれたものだった。 1950年代には、この映画が描くような状況だった。 1960年代に入ると、女性たちが郊外の家庭から、自立を求めて雄叫びを上げ始めた。 それがウーマンリブだったのであり、「新しい女性の創造」のフェミニズムだったことは、すでに周知であろう。 無給の家事労働は、女性の存在証明にならないことが証明されていく。 たとえ、古い時代に舞台設定されても、主題は現代をめぐるものだ。 昔のエピソードに現代の問題意識を重ねるから、観客は映画を自分のものとして見ることができる。 にもかかわらず、この映画は古い時代を、そのまま描いているだけだ。 不動産屋の息子ジョン(マイケル・シャノン)が、精神異常ということで、いつもは病院に収容されている。 エキセントリックな彼は、一時退院してフランクの家に遊びに来る。 そして、フランクたちの偽善的な日常を暴露していく。 今ならジョンの発言も納得だが、1950年代に可能だっただろうか。 時代設定といい、主題といい、疑問が残る映画だった。 2008年アメリカ映画 |
||||||||
|
|
||||||||
| <TAKUMI シネマ>のおすすめ映画 2009年−私の中のあなた、フロスト/ニクソン 2008年−ダーク ナイト、バンテージ・ポイント 2007年−告発のとき、それでもボクはやってない 2006年−家族の誕生、V フォー・ヴァンデッタ 2005年−シリアナ 2004年−アイ、 ロボット、ヴェラ・ドレイク、ミリオンダラー ベイビィ 2003年−オールド・ボーイ、16歳の合衆国 2002年−エデンより彼方に、シカゴ、しあわせな孤独、ホワイト オランダー、フォーン・ブース、 マイノリティ リポート 2001年−ゴースト ワールド、少林サッカー 2000年−アメリカン サイコ、鬼が来た!、ガールファイト、クイルズ 1999年−アメリカン ビューティ、暗い日曜日、ツインフォールズアイダホ、ファイト クラブ、 マトリックス、マルコヴィッチの穴 1998年−イフ オンリー、イースト・ウエスト、ザ トゥルーマン ショー、ハピネス 1997年−オープン ユア アイズ、グッド ウィル ハンティング、クワトロ ディアス、 チェイシング エイミー、フェイク、ヘンリー・フール、ラリー フリント 1996年−この森で、天使はバスを降りた、ジャック、バードケージ、もののけ姫 1995年以前−ゲット ショーティ、シャイン、セヴン、トントンの夏休み、ミュート ウィットネス、 リーヴィング ラスヴェガス |
||||||||
|
|