タクミシネマ     007 慰めの報酬

007 慰めの報酬      マーク・フォスター監督

 前作「カジノ ロワイヤル」からの続きである。
そのため、ちょっと判りにくい。
人妻とのラブ・アフェアーが多かったボンドが、若い女性ヴェスパー(エヴァ・グリーン)を愛してしまった。
彼女の裏切りによって、007になったというのが前作だった。

IMDBから

 冒頭、長いカーアクションがある。
ボンド(ダニエル・クレイグ)の乗るアストン・マーチンが、アルファに追われて、イタリアの山岳道を逃げまわる。
何とか振り切って、ヴェスパーを操っていたホワイト(イェスパー・クリステンセン)を、上司M(ジュディ・デンチ)の前まで連れてくる。

 いざ尋問という段で、M−1の同僚が裏切る。
南米がきな臭い。
ハイチで組織の幹部ドミニク・グリーン(マチュー・アマルリック)と遭遇する。
ドミニクはメドラーノ将軍をつかって、ボリビアでクーデターを起こさせようとした。
クーデターが成功すれば、彼が資源を独占できるのだ。

 メドラーノ将軍に家族を殺されたカミーユ(オルガ・キュリレンコ)と、ボンドはドミニクの野望をつぶそうと動く。
しかし、人を殺しすぎるボンドに対して、M−1はボンドをクビにしてしまう。
そうしたなか、彼は独力でドミニクを追いつめていく。


 前作をひきずっているとはいっても、監督も替わっているし、映画の展開がずいぶんとちがう。
とりわけM−1という組織の後ろ盾を失ってしまったので、個人的な動きになってしまった。
そのため、ややスケールが小さくなってしまった。
新たな新兵器もでないし、ラブ・アフェアーもない。

 アクション映画というのは、アクションを見せるものだろうか。
レッド クリフ−T」でもアクションによって、話しが切断されていたが、この映画でもアクションがストーリーと分かれてしまっていた。
話が佳境にはいると、はい、ここでアクション、といった具合に、唐突にアクションを見せるのだ。
アクションをもっと話しに絡ませて、必然性のなかでやってほしい。

 イギリスのM−1とアメリカのCIAは、ツーカーの関係らしく、互いに情報を提供しあっている。
そこまでは良いとしても、CIAはアメリカ政府の方針転換にしたがって、ころころと変身していく。
昨日の味方は今日の敵だというのだろう。
アフガンやアフリカでのCIAの動きを見れば、現実的にも肯ける話しではある。

 冷戦の崩壊後、悪役はアラブかイスラムと決まっていたが、今回は悪役の輪郭が明確ではない。
ドミニクはボリビアでのクーデターによって、世界制覇をめざしている。
いわば悪役である。
しかし、彼の組織は大きくなったので、各国政府が取引対象にしはじめたのだ。
国家と同列になるくらいの、巨大NGO組織ができつつあるのは、さもありなんである。
まったく何が正義で、何が悪だか、ほんとうに判りにくくなっている。
いや、映画が単純な正義から離れたというべきか。

 ボリビアの首都ラパスからはなれた砂漠に、豪華ホテルを造っていたが、これがセットとみえみえである。
派手に爆破していくためには、砂漠の真ん中にセットを建てる必要があったのだろうが、もう少し実物感をだして欲しかった。
好評の続編は難しいものだ。

原題は「Quantum of Solace」
2008年のアメリカ映画

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