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大金をかけた大作も1本の映画なら、少ない予算で撮られた小品も、同じように1本の映画である。 大規模な組織が作ろうが、個人が撮ろうが、まったく同じように、同じ映画として評価される。 厳しいといえば言えるし、幸運だとも言える。
この映画は、小品である。 主な登場人物は6人だけ。 しかも、古いワーゲンのマイクロ・バスが、ほとんど舞台となっており、セットは最後のコンテスト・シーンだけだろう。 それでいながら、というよりむしろ反対に、小品であるがゆえに現代社会への批判ができている。 アリゾナに住むフーヴァー家の話。 夢やぶれた夫リチャード(グレッグ・キニア)と妻シェリル(トニ・コレット)の娘オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)が、ミス・リトル・サンシャインに出場することになる。 この家には、兄のドウェーン(ポール・ダノ)、お爺さん(アラン・アーキン)と兄のフランク(スティーヴ・カレル)が、一緒に住んでいる。 ドウェーンはニーチェに狂っており、無言の修行中。 お爺さんはヘロイン中毒で養老院を追い出された。 ゲイのフランクは恋人を失って、自殺をはかって退院したばかりである。 カルフォルニアで行われるミス・リトル・サンシャイン・コンテストに行くのだが、危なっかしくて誰もおいていくことはできない。 お金のない一家は、アリゾナからカルフォルニアまで、マイクロ・バスに乗って行くことにする。 映画は一種のロード・ムーヴィーである。 途中でお爺さんは、オーバードーズで死んでしまう。 道中で発生する事件を何とか解決しつつ、やっと会場にたどり着いてみれば、お爺さんに指導されたオリーヴは、ストリップ・ダンスをやってのけた。 ミス・リトル・サンシャイン・コンテストからは非難囂々だったが、彼女は踊り続けた。 ミス・リトル・サンシャイン・コンテストは俗物の極みで、オリーヴのダンスこそ体制批判だった、というのがオチだった。 上手い役者たちの演技で、それなりのテンポがあって、話はよく判る。 星を一つ付けようかも思ったが、イマイチ引きつけるものがない。 お爺さんの存在が大きく、老人でありながらヘロイン中毒という設定は良いが、どうも彼には行動がともなわない。 チョイ悪老人は、「スペース・カウボーイズ」「ウォルター少年と、夏の休日」などで描かれており、 もっとシャープな老人像が欲しいところである。 過激な老人とその影響を受けた子供の行動が、現代社会の批判となるという設定は、充分にあり得る話で、今日的で格好の主題だろう。 着眼は良いのだが、登場人物たちがエンディングまで落ち込むばかりで、最後にオリーブのダンスが批判になるのでは、ちょっとインパクトが弱い。 リチャードの出版計画は、破綻するのが見え見えである。 インパクトの弱さは、おそらく各エピソードの先が見えてしまうからだろう。 2006年アメリカ映画 (2006.12.27) |
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