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原作が米国の鬼才フランク・ミラーといわれても、フランク・ミラーが誰だか知らない。 この原作には、おそらく大勢の若者がファンとなっているのだろう。 しかも、彼等は男性だけで、極め付きのオタクに違いない。 ずいぶんと時代遅れな物語設定である。
フランケンシュタインのような荒くれ男マーブ(ミッキー・ローク)の話、オールド・タウンの用心棒ドワイト(クライブ・オーウェン)の話と、初老の刑事ハーティガン(ブルース・ウィリス)が少女に淫する話が、並行的に進む。 しかし、3つの話題がほとんど脈絡はなく、物語の展開に強引さが目立つ。 登場人物の性格付けが貧弱で、映画としてみるには子供だましである。 画面は黒のバックに、ところどころ赤が入るというスタイリッシュなものだが、 表現方法にくらべて主題の未熟さが目立つ。 幼稚な男のマッチズムを、自己陶酔しながらヒロイックに描いている。 大変なお金がかかっているにもかかわらず、特別な市場を目当てに制作されたのだろう。 醜男のマーブが、不思議なことに美女のゴールディ(ジェイミィ・キング)に言い寄られ、 翌朝になるとベッドで死んでいる。 彼はその復讐のために動くが、この状況からしてよくわからない。 しかも、彼女には双子の妹がいて、と話は続くのだが、 彼は死刑になりながら、何と整形手術して現世に舞い戻っている。 死者が生き返るのは、幽霊でも持ち出さなければ不可能であり、この映画の物語のルールを逸脱している。 アホなブルース・ウィリスが自分の子供のような女性(ジェシカ・アルバ)と恋におちいるとあっては、 もう何をかいわんやである。 「ルル オン ザ ブリッジ」でのハーベイ・カイテルの少女趣味や、 「トゥルー・クライム」でのクリント・イーストウッドが、若い女性とベッド・シーンを演じる。 若い女性とつきあう彼等は、老人男性の古い願望を演じているのだろうか。 むしろ谷崎のような屈折した性の自意識こそ、成熟した男性のものであり、 直接的な異性指向はあまりにも動物的である。 男性にとって性は、肉体が絡んでいても最終的には観念の産物であり、 肉体だけに還元してしまうところからは、無限の快感は得られない。 現実に行えないので、映画の中で願望を描いているのかも知れないが、幼稚きわまりない。 男性が若い女性を保護する、そんな役割に自己陶酔している。 これでもかといった古い男性賛歌で、まったくやりきれない。 俳優も有名どころが大挙して出演しているが、そのほとんどが男性である。 暴力を肯定的に描き、無造作に血が飛び散る。 手足が切断されて、その断面を生々しく描き、決して上品な作品ではない。 若い俳優は、自分の経歴に気を付けるべきで、イライジャ・ウッドやジョシュ・ハートネットは、こうした映画にでない方が良いのではないか。 暴力映画にでると、俳優のカラーが固定してしまい、 よりメジャーな作品からオファーがかからなくなってしまう。 イライジャ・ウッドもジョシュ・ハートネットも、それなりの雰囲気を持っているのだから、 自分のキャリアを大切にすべきだろう。 マッチョな暴力オタク以外は、この映画を見ることは避けた方が良さそうである。 2005年アメリカ映画 (2005.10.4) |
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