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怖い映画がはやっているが、この映画も怖かった。 ホラーに属するのだろうが、主題は時代を反映したものだ。 子供と大人の確執で、しかも結論は、大人が間違っていたというものだ。
ニューヨークに住む中年の夫婦デビッド(ロバート・デ・ニーロ)とアリソン(エイミー・アーヴィング)には、1人の娘エミリー(ダコタ・ファニング)がいた。 ある日、母親のアリソンが、突然に手首を切って自殺してしまう。 愛する母を失ったショックで、エミリーは心に大きな痛手を負い、心を閉ざしてしまう。 父親のデビッドは、娘への環境を案じて、郊外の静かな屋敷に引っ越す。 しかし、それは失敗だった。 森に囲まれた大きな家では、次々と奇怪な事件が起きる。 あたかもその事件は、母親を自殺に追い込んだ父親を、エミリーが恨んでの犯行のように見えた。 病的な表情のエメリーが、チャーリーの犯行だと訴えるが、チャーリーなる人間はどこにもいない。 心理学者のデビッドは、傷心のエメリーが想像上の友達チャーリーを生み出したと考えた。 そして、優しくしかし厳しく彼女を観察し続ける。 隣家の夫婦や、新しくできたデビッドの女友達のエリザベス(エリザベス・シュー)が、彼等の家を訪れるが、事件がまた起きる。 観客は子供の異常心理による犯罪だと思って、画面を見続けるが、それにしてはちょっと変である。 父親のデビッドの日常生活が、まったく描写されていない。 カウンセラーのキャサリン(ファムケ・ヤンセン)への、エメリーの対応はまったく普通で、少しも異常ではない。 このあたりが不自然である。 こう思えてくるのは、物語も後半にさしかかってからで、中盤までは少女の犯罪だと信じ込まされる。 結局、浮気をしたアリソンに対して、嫉妬したデビッドがアリソンを殺したのであり、 しかも、殺したことを自分ではまったく自覚していなかった。 そのため映画の展開は、あたかも彼は無関係だったかのように見せる。 「シークレト ウィンドウ」のような二重人格が、最後になって明かされる。 その構成に、観客は騙されて、怖い思いをするのである。 この映画は、子供の異常心理といった、通俗的に信じられている風説にのり、 大人が保護する者、子供は保護される者、という常識を暴いている。 まず、設定自体が観客の常識に依存し、最後にそれをひっくり返してみせる。 我が国では、子供を大人と同じ人間とは見ずに、あくまで子供を劣った存在=保護の対象とみたがる。 そのため、こうした大人が悪者である映画は作られにくい。 女性が自立した後、残されたのは子供であり、 子供も人間として扱おうとする空気が、アメリカ映画にはある。 もちろん子供の自立は、情報社会化が要求しているものであり、不可避の現象なのだ。 しかし、子供の自立に対しては、どう自立させたらいいのか、いまだ正解がない。まさに暗中模索である。 どんなに賢い子供でも、小さなうちは親がすべてであり、親の生活圏が自動的に子供の世界である。 そして、親の決めることが、子供にとって絶対である。 小さな子供は親に逆らうことはできない。 この少女の年齢くらいでは、自活できないから、どうしても保護者が必要である。 にもかかわらず、子供は大人と同じ人格である。 そのあたりの子供の限界が、この映画ではよく描かれている。 子供の自立は本当に難しい。 そう思わせるに最適の映画である。 主人公こそロバート・デ・ニーロが演じているが、他には有名な役者が出ているわけではない。 物も壊れず、巨大なセットが組まれたわけでもない。 大胆なベッドシーンがあったわけでもない。 にもかかわらず、見るに耐える映画ができる。 映画製作とは時代を見る目、そしてそれを構成してくる脚本力だと、つくづく思う。 絶世の美人が、不美人を演じた「モンスター」などを振り返る時、 それを支えるのは、なんと言ってもシャープな主題に尽きる。 2005年のアメリカ映画 (2005.05.05) |
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