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子供を主題にした映画で、現代アメリカ映画の主流をいくものである。 舞台は1973年、マサチューセッツ州ケープ・アンという田舎町。 結婚式をあと3日後に控えた花嫁ダイアナが殺された。 残された両親と花婿は、失意のどん底に突き落とされた。 しかし、このカップルはすでに破綻しており、ダイアナは父親に結婚の取りやめを伝えようと、喫茶店で待ち合わせたところを射殺されたのだった。
ジョー(ジェイク・ギレンホール)は他の街から、恋人ダイアナの両親が住むこの田舎町にやってきた。 そして、結婚して父親ベン(ダスティン・ホフマン)の仕事を手伝うつもりだった。 相手の女性が殺されてしまったので、据わりの悪い状態になったが、両親は彼を気に入ってくれて、娘が死んでも息子のように接し続けた。 しかし、2人の関係が破綻していたことを、両親は知らない。 彼は当惑しながらも、両親の期待に応えて、よい子を演じ続ける。 ジョーはバーティー(エレン・ポンペオ)という地元の娘と出会い、恋仲になる。 彼女は恋人を戦争に奪われて、すでに3年も音信不通になっている。 彼女も失った恋人の思い出に生きていたが、彼女は両親に真実を伝えよと迫る。 両親にせよ、ジョーにせよ、全員がダイアナの死と向き合っていなかった。 死という真実と向き合っていなかったので、気を紛らわせようとして、母親ジョー(スーザン・サランドン)は酒に手を出したし、父親は仕事に専念しようとした。 死は悲しい出来事である。 とりわけ子供が少なくなった現代、その子供を失った両親は、生きる価値を奪われたようになる。 そして、不愉快なこと不本意なことは、すべて子供の死のせいにしたがる。 ダイアナが伝えようとしたのは、すでに結婚式の案内状まで発送し、結婚式が後3日先だというのに、夫婦になることができないときは破談にすべきだという勇気だった。 事実を事実として冷静に見つめることが、もっとも人間的であり、願望や通俗的な常識で、事実を曲げるのではないと主張する。 ダイアナたちは、互いに嫌いになったから結婚しないのではなく、結婚という愛情ではなく、親友という愛情を選ぶがゆえに、結婚しない決意をしたのだった。 常識ではないかも知れないが、現実的な認識がこの映画にはある。 いまや年齢の多寡が、人間の成熟を決めるのではない。 現代アメリカ社会は、世代の継承をどう図っていくかを巡って、必死で格闘している。 その現れが、「ゴースト ワールド」「チョコレート」「イン ザ ベッドルーム」などなど、多くの映画となって実現されている。 今までの子供を巡る映画は、大人の立場を肯定した上で、子供たちを否定的に描いてきた。 しかし、現代アメリカ映画は、子供を肯定的に描く。 大人と子供にもはや区別を付けない。 子供の可能性に期待するから、年齢の多寡は関係ない。 この映画では子供が正しく、大人は間違っているとさえ描かれる。 情報社会はいまだ誰も経験したことのない社会であり、いままでの価値観が役に立たなくなっている。 それは理解できる。 しかし、子供は残酷でもある。 女性が男性と同じ人間であるように、子供も大人と同じように、正義であり悪でもある。 この映画のように、子供を全面的に肯定してしまうのは、やはり冷静さを欠いている。 それほどアメリカ社会が、次の時代の価値観を渇望しているのだろう、とも思う。 地味な映画であるが、ダスティン・ホフマン、スーザン・サランドン、ホリー・ハンターと有名俳優が出演しているのも、一種のアメリカの良心とも言えるだろう。 台詞の少ないジョーが、裁判で証人になったとたんに雄弁になるのは、ちょっと不自然な感じもした。 カメラワークが丁寧で、こっくりとしたカラーの発色が素晴らしい。 70年代の音楽がたくさん聴けるが、主題は同時代的である。 2002年アメリカ映画 |
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