タクミシネマ        ビッグ・ダディ

 ビッグ ダディ       デニス・デューガン監督

 古くは「スリーメン アンド ベイビー」や「ジュニアー」など男性の子育て映画が何本か生まれているが、この映画もその流れのうえにある。
ソニー(アダム・サンドラー)はグウタラのダメ男である。
30歳を越えようというのに、弁護士資格は取っているらしいが、仕事をせずにぶらぶらしている。
していることと言えば、料金所の料金徴収のアルバイトだけである。
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前宣伝のビラから

 ある時、5歳の子供ジュリアン(コール&ディラン・スプラウス兄弟の二人一役)が彼の家に連れてこられる。
友人のケビン(ジョン・スチュワート)の子供なのだが、アダルト・チャイルドの彼には、子供が面白いものに見えた。
ケビンの中国行きの間に、ケビンになりすまして子育てを引き受けようとする。

 面白そうだと始めたが、子育ては甘くはなかった。
子供はおもちゃと違って、自分の意志をもっている。
大人の都合や気持ちなど、まったく斟酌してくれない。
彼は恋人のバネッサ(クリスティ・スワンソン)にも、子育てを手伝ってもらおうと思っていたが、彼女は彼のぐうたらに見切りをつけて別れていってしまった。

 取り残された彼は一人で孤軍奮闘し、それでもジュリアンと親密な関係ができる。
子供を仲立ちにして、新しい恋人レイラ(ジョーイ・ローレン・アダムス)までできる。
その時、福祉局の役人がソニーとケビンは別人であることを知って、子供を保護にやってくる。
しかも、子供を誘拐した容疑で、彼は逮捕されてしまう。
しかし、彼は子供の養育権を求めて、裁判をおこす。
結局ケビンが自分の子供だと名乗り出て、ケビンのもとに子供はいくが、ソニーにも面会権のようなものが認められ、この手の映画の常としてハッピーエンドになる。

 最近のアメリカ映画では、「エリン・ブロコビッチ」などのように女性は仕事、男性は子育てといった傾向が強い。
今までのように、両親がそろって核家族を営み、その中で子育てをする映画は本当に少なくなってしまった。
ましてや女性が専業主婦の立場で、子育てに専念する映画は皆無といっても良い。
それだけ性別による役割分担が消滅してきたと言うことだろう。

それにたいして、わが国や途上国の映画は、「オール アバウト マザー」のようにいまだに母の賛美や性別役割分担を美化している。
そう言った意味では、この映画もまごうことなく先進国アメリカの映画である。

 しかし、映画自体の出来と、主題のシャープさはまた別のものである。
主題こそ先進国のものであるが、その展開はご都合主義的で、話がうまく進みすぎる。
いくら映画であっても、あれでは納得できない。
心理のからみとか、人間関係のやりとりをもっと丁寧に展開しなければ、単なるエピソードの羅列に過ぎない。
エピソードは面白いものがたくさんあったのに、面白味に欠ける展開だった。
しかも、ソニーを演じたアダム・サンドラーが、単調な演技で興味を持続させなかった。
アダム・サンドラーはアメリカでは人気がブレイク中だとあるが、この映画に関する限りいただけなかった。
スティーブ・ブシュミなどや芸達者な人たちが出ているだけに、もう少し脚本を煮詰めて欲しかった。

1999年のアメリカ映画。


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