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第2次世界大戦で、ドイツが敗れた後、まだ日本が戦っていたときの話である。 かつてベルリン勤務の経験のあった記者ジェイク(ジョージ・クルーニー)は、ポツダム会談取材のためにベルリンへとはいる。 運転手として迎えにでたのは、米兵のタリー伍長(トビー・マグワイア)だった。
タリー伍長は、戦後のゴタゴタを上手く使って、不正な金を稼いでいた。 しかも、彼はジェイクのかつての恋人だったレーナ(ケイト・ブランシェット)の愛人だったが、彼にレーナを抱いてみないかと薦める、トンデモナイ奴でもあった。 混乱期、レーナは売春で生計を立てていたが、何か隠しているところがあった。 敗戦の混乱がベルリンを支配しており、ユダヤ人のレーナは生き伸びるのに必死だった。 彼女はナチ親衛隊の夫をもち、戦前・戦中とユダヤ人仲間をゲシュタポに売って、自分は何とか生き延びてきた。 今では、それがトラウマになっているらしい。 そして、彼女はドーラと書かれた書類を大切にもっていた。 その意味をめぐって、映画が進んでいく。 ドーラ収容所では、原爆の研究がすすんでおり、3万に以上の人間が殺された。 しかも、最低の食料で維持するため、その食料計算をレーナの夫エミール(クリスチャン・オリバー)が行っていた。 彼はドーラでの真実を公表するため、何とか西側との接触を求めていたが、彼の身柄はソ連も狙っていたので、隠れていたのだった。 ジェイクはレーナの行動に疑問を感じ、米ソが彼女の行動を、知りたがるのを不思議に思う。 そして、何とか彼女を西側に送り出そうとする。 しかし、エミールのことを隠しているレーナは、ジェイクの思惑どおりには動かなかった。 ジェイク、レーナそれにアメリカ占領軍のマラー大佐などがからんで、物語は進んでいく。 「グッドナイト アンド グッドラック」と同じように、この映画はすべてモノクロである。 それだけではない。 演技も古く演出しているし、カメラ・ワークもモノクロ時代をまねしている。 なぜ、モノクロを使うつもりになったかは問うまい。 それが成功しているかであるが、どちらとも言えないというのが正直な感想である。 現代の演技は、心の内面的な動きを、自然なうちに表出する。 その内面表出が自然であればあるほど、上手い役者ということになっている。 しかし、この映画は内面表現を一切しない。 特にレーナを演じたケイト・ブランッシェットは、さすがに上手い俳優である。 彼女の横顔にライトが当たっても、表情ひとつ変えずに、謎の女を演じていた。 監督の指示を忠実に演じるのは、必ずしも容易くはないだろう。 ジョージ・クルーニーやトビー・マグワイヤーは、いつもと余り変わらない演技で驚きはなかった。 古い演技は、ケイト・ブランッシェットの独壇場だった。 しかし、いまや主役級のトビー・マグワイヤーを、早々に殺してしまったのには驚いた。 敗戦当時のベルリンを良く知らないと、話は面白くない。 戦勝4ヶ国が、ベルリンを分割占領していた。 米ソはドイツから戦利品を持ち出そうとして、互いに牽制しあった。 時には血なまぐさいこともおきていた。 タリー伍長の死も、米ソの絡みが背景にあり、事件を知っていながらアメリカは黙殺しようとした。 「さらばベルリン」の題名は、「カサブランカ」あたりを意識して付けたのであろうが、題名と内容のつながりがよく判らない。 原題は「The Good German」で、ユダヤ人であるドイツ人レーナを描いたのだろうか。 それとも、エミールを描いたのだろうか。 レーナはナチ親衛隊の夫をもったので、生き延びることができたのだが、同胞をナチに売ってもいた。 そして、今は夫の命をかばっていたが、それは彼女の懺悔だったのだろう。 生きるためには、同胞を売るのはやむを得ないのか。 戦後になってベルリン脱出を願う彼女は、かつての恋人ジェイクをも売ろうとする。 モノクロ様式や演技の形式は、きっちりと昔を踏襲しているが、訴えたかった主題は何だったのだろうか。 よく判らなかった。 2007年のアメリカ映画 (2007.10.04) |
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