タクミシネマ         ロビン・フッド

ロビン・フッド     リドリー・スコット監督

 名監督といえども、傑作を連発するのは難しいのだろう。
それとも、リドリー・スコットも年老いて、覇気がなくなってしまったのだろうか。
1939年生まれだから、今年はすでに71才である。
無理もないのかも知れない。
ラッセル・クロウとケイト・ブランシェットという2人の名優をそろえながら、凡作に終わってしまった。
Still of Russell Crowe and Cate Blanchett in Robin Hood
IMDBから

 12世紀末。
イングランドから出兵した十字軍だが、イングランドへの敗残の道すがら、フランスの城を攻撃する。
そこでイングランドの王が戦死。
射手のロビン(ラッセル・クロウ)は報酬が未払いになると見越して、さっさと逃亡する。
しかし、王の死を本国へ伝えに戻る、騎士ロバート・ロクスリー(ダグラス・ホッジ)の殺害現場に立ち会わせたため、数奇な運命が開かれていく。

 ノッティンガムの領主である父ウォルター(マックス・フォン・シドー)に剣を届けて欲しいと、ロクスリーから頼まれる。
ノッティンガムでは、ロクスリーの妻マリアン(ケイト・ブランシェット)が夫の留守を守っていた。
ウォルターはロビンを気に入り、死んだ自分の息子の代わりに、彼を息子として迎え入れる。
すると自動的にマリアンの夫になり、彼はあっという間に貴族となってしまった。

 新たにイングランドの王となったジョン(オスカー・アイザック)は、財政逼迫に増税で対処しようとする。
しかし、それに各地の貴族達が反抗し、あわや内乱となりそうになる。
フランスからの攻撃が迫っていたので、ジョン王は貴族達から要求された自由憲章にサインする。
これで、貴族たちはイングランドの旗の下でフランス軍と戦うことに同意する。
戦いが済んでみれば、ジョン王は約束を破り、ロビンはお尋ね者になる。

 ここでいう自由憲章とは、マグナカルタにつながるものだろう。
そう考えると、この時代にイギリスの憲法は、その基礎が芽生えたことになる。
自由憲章は王権神授説をとっていた当時の王権に、制限を加えるものだった。
神からの授権に制限を加えるとは、神に制限を加えることと、当時の人たちは天に唾する思いだったろう。

 租税負担は当然だという王に対して、税負担する以上、見返りがあって当然だと考える貴族たち。
やはり、革命の原因は金だった。
自由も平等も、結局はお金が欲しいと言うことだった。
ロビンはお尋ね者にあったあと、原始共産制のような村落をつくる。
しかし、これは武力がなければ維持できなかったはずで、武力の維持には大きなお金がかかった。
そのあたりが、この映画では触れられておらず、そのあたりが凡作に脱した原因だろう。

 12世紀の庶民はいうに及ばず、貴族達だって不潔だった。
しかし、映画では不潔感というのは、なかなか伝わってこないものだ。
この映画でもずいぶんと汚していたが、やっぱり現代的な清潔感が漂っている。
この映画もCGをたくさん使っていた。
CGは美しく見せることはできても、汚く見せることはできないのだろうか。
原題は「Robin Hood」、 2010年アメリカ、イギリス映画
(2010.12.21)


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