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インセプションとは、開始とか始めるといった意味なのだろう。 人間の潜在意識の中に入り込み、その人の自己意識を変えてしまう。 つまり、他人の夢の中に入って、その人の心の動きを読み、心の持ち方を変えてしまう。 それを人工的にやろうというのが、この映画である。
突出した着想と、丁寧な構成、それに許せる範囲のちょっとご都合主義。 文句なしに、星を献上する。 2つにしようか迷ったが、主題がこなれておらず、展開の先が見えていた。 ちょっと厳しいが1つにした。 「ダーク ナイト」に続いて、力作である。 他人の夢に入るというだけなら、それほど奇抜なものではない。 また、他人の心をコントロールするのも、睡眠術とかマインドコントロールといって、それほど珍しくはない。 この映画がすごいのは、夢の中でまた夢を見て、その夢の中でまた夢を見るという、何重にもなった構造と、それぞれの夢では時間の進行が大きく違うという設定である。 「メメント」をとった監督らしく、i意識と時間を扱って、実に秀逸である。 最愛の妻マル(マリオン・コティヤール)と夢に遊んでいるうちに、彼女が心を夢の中に残したまま、現実に帰ってきてしまった。 夢のなかの時間は早い。 たちまち50年がたち、彼女はコブとは50歳の年齢差ができてしまった。 そのため、彼女は現実に適応できず、自殺をしてしまうが、警察は夢の話を信じない。 警察は彼が妻を殺したと決めつける。 そのため、国際指名手配犯となって、世界をさまよう身となった。 しかし、企業スパイの世界では、彼は有能な人間として、引っ張りだこである。 今回は、他人の潜在意識に、別の考えを植え付けるインセプションを、4次の深い階層で行おうというのだ。 大学の後輩のアリアドネ(エレン・ペイジ)を引きずり込んで、悪仲間と夢の世界へとおちていく。 犯罪に使う夢の舞台構築に、アリアドネが活躍する。 彼女に街を設計させるが、コブは彼女の構想力にきちんとした評価を与えている。 アーキテクチャーと言っていたが、日本の映画であったら、構想力といった無形の能力をきちんと評価できるだろうか。 アリアドネが設計した夢の中で、全員が行動している。 そこへ、コブの深層心理が迷い込んでくる。 列車の登場など、その謎解きは予想が付いてはいるが、それでも充分に驚きである。 それに、夢か現実かが区別つかなくなるのを防ぐために、小さなトーテムをつくる。 あの辺もよく考えられている。 しかも、トーテムのトリックが、最後への伏線になっている。 夢が何層にもなっている設定は、上層の夢が下層へと影響を与える。 そのため、上層で天地が逆になると、下層も天地逆になる。 上層で落下中であれば、下層では無重力になってしまう。 自由落下の最中は、下層も無重力だというわけだ。 無重力の世界でも、人間だけが浮遊し、ベッドなどの家具は床から浮遊しない。 ここは充分にご都合主義で、とても楽しめる。 また、最初は戸惑った時間差も、映画の進行とともに、馴染んできて納得してしまう。 最初に、物語の設定を説明しなければならず、それが退屈な解説になりがちなのだ。 しかし、この映画はみごとに観客を物語に引き込んでいる。 コブが街を折り畳んで、上下に重ねてしまうと、人は3次元を歩くことになる。 今まで平らな道を歩いてきた2人は、何の抵抗もなく垂直な道路へと歩き続ける。 そして、上の街は下の街と平行で、歩行者が天地逆に歩いている。 これはドキッとするシーンで、なかなかに新鮮である。 しかも、このシーンが後への伏線にもなっている。 記憶や意識、それに時間を扱う映画が、犯罪と絡むと、国際的になるのは必然である。 誰にも邪魔されない空間というのが、国際線の飛行機の中だというのも面白い。 だから、飛行機を借り切ってしまえば、ターゲットを独占できる。 ミステリーにはある設定だが、やることが大仕掛けになってきた。 2時間30分と、ちょっと長いが、充分に楽しめる。 「INCEPTION」 2010年アメリカ映画 (2010.07.23) |
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