タクミシネマ    しあわせの隠れ場所

しあわせの隠れ場所   ジョン・リー・ハンコック監督

 この映画が実話だというから、驚いてしまう。
日本のプロ野球に、マイケル・オアー選手のような話があるだろうか。
アメリカという国は、お金がすべての愚かな国でもあるが、こうした善意で生きている人もいるのだ。
この善意たるや、とても日本人の想像もつかないレベルなのだ。

Still of Sandra Bullock, Tim McGraw, Jae Head, Quinton Aaron and Lily Collins in The Blind Side
IMDBから

 黒人の少年マイケル(クイントン・アーロン)は、ホームレス同然だった。
ところが、とあるクリスチャンの私立高校が、入学を許可したことから、風向きが変わってくる。
その私立学校には、リー・アン・テューイ(サンドラ・ブロック)の2人の子供が通っていた。

 真冬の夜、みすぼらしい姿で歩いていた彼に、リーは一晩の宿を提供する。
彼女はホームレスの黒人に対して、最初のうちは戸惑っていたが、マイケルがいいヤツであることに気づく。
彼には優れた運動神経と、強い保護本能があることに、希望を見つけていく。
そして、養子に迎えることにした。

 白人が多い地域に住むリーたちは、黒人社会を知らなかったが、その分だけ偏見がなかった。
家族で、マイケルを受け入れていく。
とくに兄ができたと、S・J(ジェイ・ヘッド)は大喜びである。
夫のショーン(ティム・マッグロウ)も、またリーの気まぐれが始まったと思いながらも、きちんとバックアップした。

 知恵遅れに見えたマイケルだったが、文字を通じての理解に欠けるだけで、けっして理解力がないわけではなかった。
口頭で説明を受ければ、充分に対応できた。
Dばかりだった成績も、CになりC+となっていった。
アメラグにたぐいまれな才能を発揮した彼は、大学からスカウトがかかるようになる。


 家庭教師にスー(キャシー・ベイツ)をつけて、猛勉強して成績を上げて、何とかスカラーシップを獲得する。
多くの大学からオファーが来る中で、リーたちの母校であるミシシッピー大学へと進学していく。

 話としては、実に単純である。
映画だから、いくらかの脚色もあるだろう。
しかし、概ね事実らしい。
こうした事実が存在してしまうことに、アメリカの懐の深さを思い知らされる。
映画としては、小さなエピソード織り交ぜながら、見る者を引きつけていく。

 単純な話で、2時間にわたって、観客の興味を引き続けるのは、難しいことだ。
いかに話が真実であろうと、映画が面白くなければ、観客は容赦なくブーイングする。
劇場の観客たちは、けっしてダレることなく、スクリーンに見入っていたから、上手くできた映画なのである。

 まずテンポがいい。
リズミカルにカットが繋がれていく。
男顔だし、決して美人ではないサンドラ・ブロックが、軽快な演技で物語をつないでいく。
鼻っ柱の強い、しかも正義感の強い女性を演じて、秀逸である。

 「あなたは私の婿になる」とか、「スピード」や「ネット」とか「スピード2」など、突っ張った女性を演じてきた印象が強い。
「スピード」ではキアヌ・リーブスと共演しながら、「スピード2」ではキアヌ・リーブスを放りだして、
彼女はジェイソン・パトリックと組んだ。

 俳優とは演じる人なのだろうが、これほど強い女性を演じていると、やっぱり人間的にも強いだろうと思ってしまう。
豊かな胸の演出には、詰め物をしていたかも知れないが、それにしても抜群のスタイルである。
1964年生まれの彼女にとって、あのスタイルを維持するのは、並大抵のトレーニングではないはずだ。
46歳で女優を続けるというのも、大変なことだと思う。

 他には有名俳優は出ていないから、この映画は彼女でもっているといっても過言ではない。
とりたてて主題はないが、2時間を楽しく見ることができる。

 「THE BLIND SIDE」 2009年アメリカ映画 
(2010.03.10)


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