タクミシネマ     アバター

アバター     ジェームス・キャメロン監督

 鳴り物入りで宣伝された3D映画である。
3時間と長いし、入場料も高いので、やや敬遠気味だった。
公開されて2ヶ月たち、やっと見に行った。
しかし、公開2ヶ月もたったとは思えないほど、映画館は混んでいた。
Still of Zoe Saldana and Sam Worthington in Avatar
IMDBから

 22世紀、地球から遠く離れたパンドラに、アメリカは進出していた。
自然の宝庫であるパンドラには、先住民族のナヴィが暮らしていた。
アメリカ人たちは、アメリカ大陸を植民した白人のように、パンドラに住むナヴィたちを無視して、あたかもインディアンを扱うような傍若無人な振る舞いだった。

 パンドラは空気が薄くて、人間は長く行動できない。
そこで人間のDNAをもつアバターをつくった。
それはナヴィの身体をしており、人間が乗り移ることができた。
元海兵隊員で下半身不随になったジェイク(サム・ワーシントン)は、兄の身代わりになることによって、アバターに乗り移ることができようになった。


 ジェイクはたちまちアバターに慣れ、自由に動けることを満喫する。
そんななか、ナヴィの族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と仲良くなる。
こう書いてくれば、もう話は見えるだろう。
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」と同じ展開である。
ナヴィの住む地域にある鉱物をねらう人間たちは、ナヴィを武力で制圧をはじめる。

 ナヴィと人間のあいだに挟まれて、ジェイクは最初のうちこそ困惑していたが、とうとうナヴィ側に立って闘うことになる。
話の骨組みは、未開地開拓の懺悔である。
それに環境保護をくわえて、宮崎駿で味付けした感じである。
木の霊とか宮崎アニメそっくりだが、3D表現がとてもきれいに見せている。


 この映画の場合、主題については、特別に言うことはない。
殺してしまったインディアンへの懺悔とか、破壊した自然へのオマージュとか、と言うだけである。
むしろ科学が、自然破壊の先兵になっているのは、批判されるだろう。

 アバターを創りだした科学者のグレイス(シガニー・ウィーヴァー)が、ナヴィを人間として見ておらず、新種への好奇心しかない。
そんなニヒリズムが戦争へ繋がるのに、グレイスが無自覚であるのは疑問が残る。
この映画で特筆すべきは、主題より眼鏡をかけてみる立体画面であろう。

 立体的な画面は、とても自然で美しい。
パンドラの自然も、宮崎アニメの影響をこそ感じるが、立体感をともなった色彩は、一見の価値がある。
登場する動物や植物など、想像力がおおきく広がっている。
新しいキャラクターをつくるのに、苦労したことが隅々から伝わってくる。
それに対して、軍隊の金属的な冷たさが、じつに上手く対比されている。


 戦闘機のディテールなど、恐いほどに描き込まれており、CGの成熟を感じる。
また、車椅子のジェイクだが、彼の足が異様に細い。本物の障害者のようだ。
おそらく椅子に細工したか、CGでの合成だろうが、細かいところまで神経が届いている。

 「ガールファイト」で強烈な目力を見せたミシェル・ロドリゲスが、独特のキャラクターに育ってきた。
今回の戦闘機乗りは、鼻っ柱が強くて正義感が強く、肉体派の彼女にはまり役だった。
アンジェリーナ・ジョリーなど肉体派女優が、大きな力を持ちはじめたアメリカ映画で、今後楽しみな存在である。

 3Dのすごさは認めるが、この監督は「タイタニック」といい、主題のない人なのだと思う。
それでも、これだけヒットすれば、文句の付けようがないということだろう。

 「AVATAR」  2009年アメリカ映画 
(2010.02.24)

TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

 「タクミ シネマ」のトップに戻る