タクミシネマ  ラブリー・ボーン

ラブリー・ボーン    ピーター・ジャクソン監督

 子供が死ぬと、親や家族たちは衝撃を受ける。
原作は子供の死によって、家族がバラバラになってしまう様子を描いたものだという。
しかし、映画はオカルト物という感じで、何が言いたかったかよく判らなかった。

IMDBから

 1973年12月6日、スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は近所に住むジョージ・ハーベイ(スタンリー・トゥッチ)という男性に殺されてしまう。
彼女の霊は、天国へとは導かれずに、しばらく地上と天国の間にいる。
49日間は天国へは行かないという、我が国の風習を見ているようだ。

 この映画では、49日どころか、数年にわたる長い期間である。
この期間に、彼女は家族と接触しようとするが、いかせん霊になってしまっている。
当然にすれ違いになる。
結局、殺された経緯などが、のろい展開で続くのだが、見ていてイライラしてくる。
 もったいをつけた話の展開で、一体何が言いたいのだ、とフラストレーションが高まってしまう。


 ジョージ・ハーベイは小児愛の変質者だったが、ほんとうの殺人ははじめてのようだ。
サスペンス映画の多くは、変質者による連続殺人と描く。
しかし、この映画は殺されたスージー側からと、家族のほうから描いている。
ハーベイを描きこんでもいるから、ちょっと分かりにくい。
それにしても、展開が鈍い。

 父ジャック(マーク・ウォールバーグ)、母アビゲイル(レイチェル・ワイズ)、祖母リン(スーザン・サランドン)とそれなりの役者がでているし、お金もかかっている。
にもかかわらず、面白くない。
祖母リンのキャラクターにいたっては、まったく理解の外である。


 子供の死によって、母アビゲイルが精神的にまいってしまう。
そこで、ジャックがアビゲイルの母親リンを自宅に呼ぶ。
しかし、この母親がメチャクチャで、家事がまったくできない上に、アル中なのだ。
にもかかわらず、アビゲイルは彼女をおいて、カルフォルニアへと家出してしまう。

 アビゲイルはカルフォルニアの農場で働き始める。
子供の死をめぐって、夫婦関係が軋み始めるのは理解できるが、この映画の展開では説得力に欠ける。
最後に、犯人のハーベイは天罰のごとく、崖から落ちて死ぬ。
これもよく判らない。
天国と地上の間をさまよう、スージーのオカルト映画としか思えない。

 「コンタクト」などでも天国の風景を描いていたが、天国を映像化するのは難しい。
地獄も難しいが、天国は理想の地だから、何を理想にするかでもあるし、最上の快楽を描くのは難しいものだ。
それにしても、この映画の天国は、陳腐に過ぎる。
原題は「THE LOVELY BONES」
2009年アメリカ、イギリス、ニュージーラン映画
(2010.02.04)


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