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この映画は、オムニバス形式になっている。 オムニバス形式は、物語の流れを切断してしまうので、必ずしも上手くいくとは限らない。 しかし、この映画に関するかぎり、有効に使われている。
1941年、第一次世界大戦が始まったばかり。 フランスの田舎ナンシーに住む農夫のもとに、ナチスのハンス・ランダ大佐大佐(クリストフ・ヴァルツ)が、ユダヤ人を探しにやってくる。 ユダヤ人少女のショシャナ(メラニー・ロラン)は、辛うじて逃げることができた。 これが第一章。 ユダヤ系アメリカ人で構成された<イングロリアス・バスターズ>が、連合軍極秘部隊としてヨーロッパ戦線でドイツ軍に対していた。 アルド(ブラッド・ピット)を長とする彼等は、残酷な手法でドイツ人を殺し、ナチスを苛立たせていた。 これが第2章。 3年後、ショシャナはパリで映画館主になっていた。 その映画館にナチの幹部を集めて、『国民の誇り』が上映されることになった。 <イングロリアス・バスターズ>のアルドが、ヒトラー暗殺のために映画館に乗り込もうとする。 ショシャナは映画館ごと焼き払って、ナチの撲滅を計画する。 歴史を無視した歴史映画で、こうした話も大いにアリだろう。 ユダヤ人とナチの動き、親ユダヤ人たちの戦いなど、動きがあって面白く見ることができる。 この監督は、たくさんの映画から多くのシーンを引用し、緊張感のある画面を演出している。 オムニバス形式でありながら、映画はリズム良く展開する。 とくに、第一章が緊張感が高い。 主人公的な役割を果たすハンス・ランダ大佐を演じるクリストフ・ヴァルツが、とてもうまい演技で、映画を引き締めている。 演技の下手なブラピだが、南部なまりの英語という設定で、演技の下手さをカバーしている。 おそらくブラピには嵌り役だったようにおもう。 いつものタランティーノ風の演出ではなく、手堅く正統的な映画を撮っている。 1963年生まれだから、彼は今年で46歳であり、それほど高齢というわけではない。 しかし、登場する3人の女性が、3人とも美人なのだ。 ここらあたりを見ると、映画製作術には長けているだろうが、感覚はちょっとマッチョすぎるのではないだろうか。 これは戦争を題材にしているが、戦争映画ではなく、ましてや人間の生き方などを描いたものではない。 若いショシャナを映画館主にしてしまったり、ドイツ軍の若い兵士フレデリック(ダニエル・ブリュール)の映画を撮ったりと、この映画を映画そのものに捧げたのではないか。 敵味方に分かれながら、映画をめぐって映画が進む。 この映画の主題は、映画賛美だったように思う。 古き良き映画好きに捧げる映画だったのだ。 そう思ってみると、なかなかに良くでいている。 「ジャッキー ブラウン」などと同様に、 じっとスクリーンに目を凝らしていながら、監督の映画術を楽しむのが、この映画のもっとも真っ当な見方だろう。 2009年アメリカ映画 原題は「Inglourious Basterds」 |
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