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オランダは、アムステルダムで話が始まる。 モロッコ人の両親をもつドゥーニャ(マリアム・ハッソーニ)と、生粋のオランダ人デイジー(エヴァ・ヴァンダー・ウェイデーヴェン)は、大の親友である。 いま、2人は運転免許の練習中。
イスラムを信じるドゥーニャの家族は、ウルトラ古典的な家族関係である。 会ったこともない従兄弟との結婚を、親が決めてしまうという。 しかし、デイジーは天真爛漫のオランダ娘である。 彼女の母親はシングル・マザーで、若い男性と住んでいる。 性格はまったく反対。 なぜかドゥーニャの家族は、モロッコに帰国することになる。 2人の親友が分かれ離れになる。 その時、デイジーは妊娠していることが分かる。 産むか否か揺れ動く彼女だが、中絶を一時見合わせる。 生物学的な父親がモロッコに住んでいるので、父親を捜してドゥーニャの後を追う。 自由奔放なオランダ娘が、イスラムの国へ行ったら、どうなるかは明かである。 現在でも、西洋人が好きなモロッコは変わっていない。 マラケシュのジャマエルフナ広場は、10年1日のごとく祭りを繰り広げている。 文化的落差が大きい割には、西洋人には行きやすい場所である。 しかし、モロッコでは、女性がタバコを吸うことも禁止。 もちろん肌を出すのものダメ。 ビキニの水着など想像も付かない国である。 デイジーは行く先々で衝突を繰りかえす。 その間にはさまって、ドゥーニャは困り果てる。 一度はデイジーを突き放し、彼女はイスラムの旧習に閉じこもろうとする。 しかし、一度先進文明を知ってしまったら、もうイスラムには戻れない。 ドゥーニャとデイジーは、見合いなど放り出しデイジーの父親を捜して、カサブランカからマラケシュへと旅を始める。 話の展開は見えている。 無防備な西洋娘が、直線的にモロッコを歩く様を、おもしろおかしく描いている。 しかし、テレビ・ドラマが原作だったとかで、予定調和的なエンディングになる。 途上国の人たちは、なかなか新しい行動を認めない。 だから、モロッコの映画だったら、デイジーの行動は徹底的に非難されるだろう。 しかし、この映画は先進国で撮られている。 そのため、途上国の価値観に、とても寛容である。 女性の行動を規制することも、批判しないし、イスラムの男性たちを批判もしない。 だから子供が、先進国の文明に染まることを許さない。 たとえば、イスラム諸国では、キリスト教の公立小学校など作らせない。 しかし、オランダではイスラムの公立小学校もできている。 イスラム教徒は外国にでてきても、スカーフを被ろうとする。 先進国ではそれを許す。 しかし、イスラム諸国では外国人にも、ミニ・スカートを許さない。 スカーフや腰巻きを付けるように、外国人女性にも強制する。 現在のところ、イスラムを信じているのは、途上国だけである。 しかも、石油がでなければ、多くのイスラム諸国は、今でもラクダに乗っていただろう。 ちょっと前には、西洋人たちも他の文明を認めなかった。 クリスチャン以外は野蛮人だとして、異教徒を殺しまくってきた。 文明はけっして両立的ではなかった。 そうした反省から、先進国の人たちは文明の併存をいう。 この映画も、最後にモロッコ人とオランダ人が、仲良く踊る場面で終わる。 しかも、いまの白人文明にとって、文化相対主義が有効だからだろう。 反対に、途上国は途上国で居続けるかぎり、文化相対主義などとる必要はないのだ。 女性を抑圧し続けても、イスラム世界がイスラム世界であるかぎり、何も困ることはない。 カサブランカで、デイジーが荷物を盗まれる場面がある。 相手を信じて、荷物を預けたとたんに、モロッコ人が持ち逃げする。 これは都会は恐いところだと、ドゥーニャの発言を裏付けるシーンだが、見知らぬ相手を信じないのは、結局、貧しいからなのだと思う。 デイジーのノリは極端だとしても、ヨーロッパならこれほどではないように感じる。 途上国では太っていることが裕福の証でもあるので、女性たちは皆太りたがるのだろう。 若いときにはスタイリッシュな女性たちも、中年には見事な肥満体になる。 エキゾチックな美人のドゥーニャ(マリアム・ハッソーニ)だが、スタイルも良くとても魅力的である。 しかし、後ろ姿からはお尻の大きさがわかり、彼女も中年になると豊満な肉体になるのだろう。 原題は「Dunya & Desie」 2007年オランダ・ベルギー映画 |
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