タクミシネマ         スウィーニー・トッド−フリート街の悪魔の理髪師

スウィーニー・トッド 
 フリート街の悪魔の理髪師
ティム・バートン監督

 何故、こんな映画が撮られたのだろうか。
その答えは、ティム・バートン監督だからとしか言いようがない。
スリーピーホロー」と同様に、まったく主題というものがなく、彼独特の美意識が画面に連続する。

スウィーニー・トッド (DVD)
photo of Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street,  Johnny Depp, Alan Rickman
IMDBから

 ティム・バートンやディヴィッド・リンチは、独特の美意識があるためか、固有の若いファンがいる。
しかし、何を訴えるのか、両者ともに判りにくい。
特にこの作品に関しては、ほとんどないと言っても良い。

 19世紀のロンドンに実在したらしい、床屋の話である。
ブロードウェイでミュージカルになっているらしい。
ミュージカル仕立てのまま、映画化した。
喋っていた人が、突然に歌い出すのは、やっぱりちょっと違和感がある。

 ターピン判事(アラン・リックマン)が、若き床屋ベンジャミン・パーカー(ジョニー・デップ)の美しい妻に横恋慕したことから、彼は無実の罪で投獄・追放される。
15年後、スウィーニー・トッドと名前も姿も変えて、フリート街のミセス・ラヴェット・パイ店の2階に理髪店を開く。

 ミセス・ラヴェット(ヘレナ・ボナム=カーター)は、肉が高くなって、パイが売れずに困っていた。
2人は、床屋に来た客を殺して、パイに混ぜて売り始めた。
彼は妻子を奪ったターピン判事への復讐を誓い、客を殺してはパイネタにしていた。

 やや暗い画面、飛び散る血糊、おどろおどろしいメイキャップなどなど、監督の美意識としか言いようがない。
しかも、血の色が本物より鮮やかで、いかにもキッチュですと言わんばかりで、何とも言いようがない。
冒頭の血の流れるシーンなど、血の扱いがもう冗談としか言えないほどブラックである。

 そう、この映画は、きわめつきのブラック・コメディである。
ゲラゲラ笑えるようなコメディではないが、間違いなくコメディである。
まじめな顔をして、不気味な世界を形作る。
マーズ アタック」にしても、この監督は人を食った作品を撮る。

 映画は監督のものだと言いながら、ジョニー・ディップには何か妙な存在感を感じる。
この映画でも、彼は不気味な雰囲気に良くマッチしており、「パイレーツ オブ カリビアン」などとは、また違った感じがする。

 監督の奥さんであるヘレナ・ボナム=カーターが、パイ屋さんに扮しているが、これまた強烈な印象である。しかも、トッドを愛するがゆえに、乞食になりながらも生きている妻の状況を教えない。
トッドはただの乞食女だと殺してしまう。このあたりも普通の映画とは違う。

 歌を歌いながら、次から次へと、喉をかききるシーンが連続する。
そのたびに血が飛び散り、客が絶命する。
残酷なシーンの連続に、いささか食傷気味になる。
リアルな殺人シーンでないとはいえ、この映画は、1人で見ないほうが良いだろう。

 2007年アメリカ映画
  (2008.1.22)

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