タクミシネマ       ラッキー ナンバー 7

 ラッキー ナンバー 7   
 ポール・マクギガン監督

 ジョシュ・ハートネットがカッコイイ。
彼は「ブラック・ダリア」でも格好良かったが、今が旬の俳優さんだろうか。
妙な雰囲気をもった映画で、スタイリッシュでしかもズッコケたところが、笑いまじりに楽しめる。
やや甘いが、星をひとつ付ける。

ラッキーナンバー7 (2枚組) [DVD]
IMDBから

 父親が闇のバクチに手を出したばかりに、一家皆殺しの目にあう。
しかし、子供だったヘンリーは、殺し屋のグッドキャット(ブルース・ウィリス)から恩情をかけられて命拾いする。
そして、殺し屋を父として育つ。
もちろん殺しのテクニックを仕込まれたのだろう。

 20年もたって、ヘンリーはスレヴン・ケレブラ(ジョシュ・ハートネット)と名前をかえて、復讐にやってくる。
20年前は、ひとつの組としてバクチの胴元をはっていたボス(モーガン・フリーマン)とラビ(ベン・キングスレー)は、今では仲違いし、敵対する組織になっていた。

 ニューヨークにやってきたスレヴンは、両方の組織から借金しているニック・フィッシャーの身代わりとなって、両方の組織に接近する。
そして、父親が殺されたのと同じ方法で、ボスとラビを殺す。
復讐劇とヤクザの抗争を絡めて、なかなかに複雑な展開で、最後まで結末が判らない。
復讐の主旋律に、リンジー(ルーシー・リュー)との恋愛劇がからむ。

 20年前、ヘンリーの母親は専業主婦だった。
しかし、現代の女性リンジーは職業をもった女性であり、
恋愛の最中でも仕事の話が、きちんと挿入されている。
登場人物のこうしたディテールは、とても大切である。
女性も職業をもっているのが、当然になった現代の物語であることを、
しっかりと下敷きにしているからウソっぽさが少ない。
我が国の映画は、こうしたリアリティを大切にしないから、絵空事になってしまうのだ。

 ルーシー・リューは39歳で、ジョシュ・ハートネットは29歳。
いくらアジア人が若く見えるといっても、10歳の年齢差がある恋人はちょっときついが、
それでも職業をもった女性という設定が、年齢差を解消させている。
男性が稼ぎ、女性が養われる関係では、女性は支配されているのだ。
だから女性が年下でなければ不自然だが、男性も女性もともに稼いでいれば、恋に年齢差は関係ない。 

 ルーシー・リューは決して美人でもないし、スタイルが良いわけでもない。
胸ぺったんで、しかも中国系のアメリカ人である。
これだけのハンディがありながら、メジャーの映画で主役をはる。
かつてなら考えられなかった。
社会の変化を反映して、アメリカ映画はどんどん変わっている。
ちょっと気になったのは、10人以上が殺されており、簡単に殺しすぎは問題ではないだろうか。

 この映画で見るべきは、ラビを演じたベン・キングスレーの演技だろう。
宗教者でありながらギャングという矛盾した役割を、知的でクールな演技でこなしていく。
決して下手ではないモーガン・フリーマンも、この映画では彼の前に影が薄かった。
それに対して、毎度のことながらブルース・ウィリスの演技は単調で、
どの映画も同じ演技であり、やっぱり下手だった。

原題は、「Lucky Number Slevin」 2006年アメリカ映画
  (2007.1.25)


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