タクミシネマ       ヘンダーソン夫人の贈り物

ヘンダーソン夫人の贈り物
 スティーブン・フリアーズ監督


 実話にもとづいた微笑ましい小品であり、そこそこに楽しめるが、それ以上でも以下でもない。
第2次対戦が迫っていた1937年のこと、大富豪だったヘンダーソン氏が死んだ。
ヘンダーソン夫人の贈り物  (DVD)
公式サイトから

 未亡人となったローラ夫人(ジュディ・デンチ)は、ウィンドミル劇場を買うが、たちまち赤字に転落。
そこで夫人はヌードショーを、始めることを思いつく。
裸を見せることなど、当時の誰もが思い至らなかったが、
彼女は支配人ヴィヴィアン・ヴァンダム(ボブ・ホスキンス)を叱咤激励し、開場にこぎ着ける。
そして、友人の高級官僚に手をまわして、
モデルが動かないことを条件に、裸を見せることを承認させる。

 ヴィクトリア時代の名残によって、人々の行動はきつく縛られており、
裸を見せるなど厳しく禁止されていた。
そうした時代に、上流階級の女性が、ほとんど気まぐれに始めた額縁ヌードショーが大当たり。
戦場へと出征していく兵士たちへの、思い出作りに多いに役立った。

 この映画で見るべきは、老夫人の恋心と、支配人との信頼関係だろう。
気っぷの良いローラは、ユダヤ人の支配人と喧嘩をしながらも、劇場をもり立てていく。
戦時下の制限が強まるなか、
彼女は持ち前のきかん気を発揮して、時代に身体を張って対決する。
イギリスの大富豪が、美しい建て前を押し立てながら、お金儲けに精をだす様が描かれている。


 小さな劇場でのレビューをあつかった映画は、「天井桟敷のみだらな人々」など沢山あるが、
この映画もまた舞台裏を覗かせてくれる。
出演女性とローラとの交流や、観客たちの支持など、心温まるエピソードを交えている。
反ナチ意識は、今さらながら強いものだったと知る。
最後のよりどころは、自由主義なのだろう。
ジュディ・デンチが達者な演技を見せている。
 2005年イギリス映画
  (2006.12.30)

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