タクミシネマ        天井桟敷のみだらな人々

天井桟敷のみだらな人々 ジョン・タトゥーロ監督    

 1905年のニューヨークが舞台である。
劇場に属する人々のと生態をコミカルに描いたものだが、なかなかハイブローな作風である。
人形劇の紹介による三幕構成のオムニバス形式で、脚本家兼演出家のトゥッチオ(ジョン・タトォーロ)が主演・監督をしており、映画と劇中劇が並行して進むという構成になっている。
劇場パンフレットから


 劇場付きの劇団が常打ち小屋で演技をしていたが、劇場主はトゥッチオの脚本を認めず、自作の劇はなかなか上演の機会がない。
ある時、主演の俳優が舞台で倒れ、その穴埋めに彼の作品イルミナータが上演されることになる。
その作品は完結していないので、見に来ていた演劇評論家ベヴァラグア(クリストファー・ウォーケン)には不評だが、有名女優セリメン(スーザン・サランドン)には評判が悪くなかった。
しかし、彼等にはそれぞれ思惑があっての動きだった。

 ベヴァラグアは劇の中に登場したマルコに同性愛を感じたのだし、セリメンはトゥッチオに愛情を感じ、自分のお付き作家にしたかったのであった。
しかし、劇場主は次の上演機会をなかなか与えなかった。
トゥッチオの愛人のレイチェル(キャサリン・ボロウィッツ)は、彼の才能を買っており、劇場主に談判してなんとか上演機会を貰う。
そんなとき、トゥッチオはライバルであるセリメンの出演している劇場に行くが、トゥッチオは自分たちを捨てて、セリメンとパリの劇場に行くのだという噂が流れ、同僚たちの疑惑を招く。
トゥッチオはセリメンの誘惑には乗らず、今まで通りの劇場でレイチェルが主演して幕が開く。

 そうした劇場での内輪話に、出演者、劇場主、観客などを絡めて話は進む。
狭い世界の中で、欲と色がからんで、ごちゃごちゃした人間関係だが、映画の製作者はそれを温かい目で見ている。
トゥッチオに思いを寄せるがかなわない若手女優、女性の尻ばかり追いかける男優、口の悪い舞台装置係、かかあ天下の劇場主夫婦など、多彩な人間描写である。
人生は舞台だ、という主題だろうか。
悲喜こもごもの人生を、舞台という演出されたフィクションに置き換えて、観客に見せる。
舞台は人生を描くわけだから、人生は舞台だとも言える。
その主題より、緻密に作られたセットやおどけた人間関係が楽しめる。

1998年のアメリカ映画


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