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今時、ずいぶんとレトロな映画である。 冒頭部分で露出オーバーのため、やや色飛びがあったようだが、それは無視したとしても、 演出といい演技といい、もちろん主題といい、古色蒼然たる映画である。 「シャル ウィ ダンス」の向こうを張ったわけではないだろうが、社交ダンス(競技ダンス?)が舞台になっている。
プロのダンサーであるヨンセ(パク・コニョン)は、以前の競技会では足を骨折し、韓国代表になれなかった。 その後、ライバルにパートナーを奪われて失意の底にいた。 そんなところへ、中国在住の韓国人チャン・チェリン(ムン・グニョン)がやってくる。 最初のふれこみは、ダンスの上手い女性で、彼のパートナーとして最適ということだった。 中国領内にも、韓国人は住んでいるという。 とくに北朝鮮国境近くの延辺(エンペン)地区は、人口の半分くらいが朝鮮人らしく、経済成長著しい韓国へと渡る者が多かった。 朝鮮人種とはいえ、彼等の国籍は中国である。 簡単には韓国籍はとれない。 働くにも韓国国籍が欲しい。 そこで、偽装結婚がおこなわれていた。 チャン・チェムリンをパートナーとするために、彼は偽装結婚をするつもりだった。 飛行場に迎えに出てみると、来るはずだった姉に替わって、 来たのはまったくダンスのできない女性だった。 当然の失意。 しかし、競技会に間に合うように、意を決してトレーニング開始。 ここまで書けば、どんな展開だかは、簡単に想像がつくだろう。 いわばダンス版スポコンもの、それに純情と偽装結婚が絡んでくる。 その理由は沢山ある。まず、主題が今時あるかと思えるほどの、男尊女卑なのだ。 もちろん表面的にはチャン・チェムリンは、可愛くて大切にされている。 しかし、可愛い女性が年上の男性から、庇護的に大切にされること自体が、 すでに男女差別そのものだ。 彼等の関係は対等ではなく、上位の男性から下位の女性へとといった、一方的なものでしかない。 演技について言えば、2人の演技は見得を切っている。 今では、振るまいや仕草を、いかに自然に見せるかが、演出であり演技である。 いかにも演技でございといった見得きりは、とても今風ではない。 そのうえ、語られるセリフも、こんなことを言うだろうかといった、現実離れの甚だしい。 もっとも、字幕を読んでいるだけだから、こちらが理解していないだけかも知れない。 韓国語では自然だということにしよう。 それにたいして、ヒロインのムン・グニョンは小柄で、迫力ある現代韓国女優とは思えなかった。 やはり男性が上位、女性が下位という設定自体が、すでに時代錯誤であり、脚本の段階で失敗作だったのだろう。 女性が可愛さを売るのは、もう決定的に古いのだ。 映画をとおして見える韓国の住環境は、我が国よりもはるかに良質らしい。 ヨンセが住んでいる部屋はペンと・ハウスらしいが、たっぷりとした広さもあり、とても良い雰囲気である。 お話だとはいえ、あれだけの広さを設定するのは、現実とそれほどかけ離れていないのだろう。 なかなかに羨ましかった。 どっちでも良いことだが、ちょっと気になったのは、チャン・チェムリンが結婚指輪を右手の薬指にしていたことだ。 韓国では結婚指輪を右手の薬指にするのだろうか。 2005年韓国映画 (2006.4.19) |
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