タクミシネマ       スター ウォーズ エピソードV

スター ウォーズ  エピソードV  ジョージ・ルーカス監督 

 6部構成の最終回である。
後編の第1部で予告されたとおり、アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)が、悪の手先になってしまう。
彼はアミダラ女王パドメ(ナタリー・ポートマン)の恋人だったし、パドメは妊娠している。
今まで彼は、正義役そのものだった。
それが悪のダース・ベイダーになっていくのは、よほどの説得力が必要だが、ちょっと説得力が弱い感じがした。

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 悪に転落していく要素は、2つ設定されている。
1つ目の要素は、ジェダイの評議員にはなれるが、マスターになれなかった。
彼はより大きな力が欲しいと望んでいたのに、自分が評価されていないと感じ、
自分の属する世界に幻滅を感じてしまう。
そこに野望という邪な欲求が芽生え、悪に転落する契機が埋め込まれる。

 次の要素は、パドメが出産で命を落とす夢を見る。
パドメを愛しているので、彼女の死は耐えられない。
すると、彼の野望を見抜いた銀河共和国のパル
パティーン議長(じつはこれが悪の親分だった)に、悪の力を身につければ、パドメを救えると唆される。
そこで、彼はパドメを救うために、パドメなどを裏切って悪の手先になっていく。

 後編であるこの映画が3部作の最後で、
この映画の最後がシリーズの最初に戻っていく円環構造になっているらしいが、
エピソードTが公開されたのは1999年と、すでに6年もたっている。
そのため観客は、話の展開をすでに忘れている。
やっぱりシリーズ物といえども、一話一話が完結してくれないと、なかなか楽しめない。
今夏枯れで、面白そうな映画がないので見に行くが、他の作品に勝てないように思う。


 さすがに映像的には、1作ごとに密実になっている。
宇宙空間の描き方など、これでもか、といった具合に丁寧に、しかも細かく描き込まれている。
sfxと実写との組み合わせもうまく、技術的な進歩は目を見張るばかりである。
しかし、技術を支える物語性やディテールになると、想像力をふくらませるのが如何に難しいか、知らされてしまう。

 都市の作り方、宇宙船の飛び方、着陸の仕方、戦い方や生物の生き死に、想像上の動物の形など、すでにどこかで見た物ばかりである。
都市の作りは、相変わらず高層建物が林立し、その間を乗り物が規則正しく走るものだ。
未来都市が超高層建物というのは、もう終わりにしても良いように思う。
超高層建物は、建物内では便利かも知れないが、都市としてみれば実に不便だろう。

 超高層建物のあいだは離れているので、建物間の移動のためには、一度地上階まで降りなければならない。
その後、また何十階も上昇するのだから、都市としてみれば不便この上ない。
平面的に広いだけというのも、遠くなりすぎて不便かも知れないが、
アリの巣のように有機的な構造の建物を想像しても良いだろう。
どうも未来都市の定型化が、進んでいるように思えて仕方ない。

 宇宙船の飛び方や着陸の仕方だって、じつに平凡である。
新しい飛び方や着陸の仕方を、クリエーターたちは考えても良いだろう。
動物や機械にしても、発想のもとになったものが、簡単にイメージできてしまう。
あっと驚くような想像上の物を登場させて欲しい。
シリーズ連作になってくると、見る方もマンネリ化してくるので、常に新しい驚きを投入しなければならない。
この厳しさは未来物の宿命だろう。

 映画の冒頭、分離主義者に捕らわれた銀河共和国のパルパティーン議長を、
オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とアナキン・スカイウォーカーが救出にいくが、
チャンバラのシーンに頼りすぎている。
この映画自体が活劇だとしても、チャンバラは物語の決着をつけるものだから、
多用しては物語の密度が下がってしまう。
よくできた西部劇でも、むやみにピストルを発射しないように、
チャンバラは物語の鍵を握るところで、ちょっとだすべきなのである。
全体にチャンバラシーンが多すぎる。


 この映画は2時間半を越えており、無駄と思えるシーンがたくさんある。
宇宙のシーンがカットとしても長すぎるし、カット数としても多すぎる。
1944年生まれのこの監督は、すでに60歳を越えており、
「アメリカン・グラフィティ」を撮った頃のような瑞々しさはない。
表現における年齢というのは、ほんとうに残酷なものだ。
2005年アメリカ映画
(2005.08.10)

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