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童話ではあるのだが、勧善懲悪ではないし、必ずしもハッピーエンドにはならない。 冒頭からして、3人の子供たちは、火事で焼けた自宅に呆然として始まる。 そのうえ、両親が死んだと言う。 まだ小学生くらいの彼等には、この上ない不幸が、これでもかとばかりに襲いかかる。 とある作家(声:ジュード・ロウ)の語りで、この物語は始まる。
ボードレール家のヴァイオレット(エミリー・ブラウニング)とクラウス(リアム・エイケン)、それにサニー(カラ&シェルビー・ホフマン)は仲良しの三姉弟妹。 長女のヴァイオレットは天才発明家、長男のクラウスは本が大好きで、大量の本をすでに読破している。 末っ子のサニーは噛むことが大好き、どんなものでも噛み付いたら離さない女の子。 サニーはダブルキャストだが、彼女の役割がおもしろい。 1人子では物語が悲惨になりすぎてしまう。 子供が3人という設定が、とてもよく効いている。 両親がいなくなったので、3姉弟妹は遠い親戚のオラフ伯爵(ジム・キャリー)のもとに預けられる。 しかし、オラフ伯爵は、莫大な遺産にしか興味がない。 3人を亡き者にして、遺産を着服しようとする。 3人は力を合わせて伯爵に立ち向かうが、オラフ伯爵はしぶとい。 彼は後見人となろうとするが、実態を知っている子供たちはそれに抵抗する。 しかし、物語の性質上、オラフ伯爵の正体はなかなかバレない。 そのあたりの顛末が、おかしくも恐ろしげに描かれていく。 子供たちが預けられる人たちの前に、オラフ伯爵は姿を変えて何度も現れてくる。 そのたびに何も知らない大人たちは騙され、子供たちはますます不幸に陥っていく。 蛇など気味の悪い動物に凝っているおじさんが、実はいい人だったり、不動産屋が怖いおばさん(メリル・ストリープ)がいたり、しかも、こうした設定の舞台が幻想的な空気をもっている。 絵もきれいで、この映画の展開を考えた人は、本当に美意識がすばらしい。 やや暗い画面ながら、ティム・バートンの映画のような雰囲気だった。 いくつかのエピソードの中に、オラフ伯爵が手を代え品を変えて登場するのだが、扮するジム・キャリーの演技がちょっと臭い。 もともと彼の演技はクセがあるのだが、「エターナル・サンシャイン」などでは、ぐっと押さえた演技でよかった。 しかし、今回はクセが出すぎてしまい、それが鼻についてしまった。 喜劇だと力みすぎるのだろう。もう少し平常心でやって欲しかった。 アメリカでは原作の童話が大ヒットしているそうで、自分の子供たちが原作を読んでいたので、出演を決めたのがメリル・ストリープやジュード・ローだという。 それにダスティン・ホフマンも加わって、出演俳優は実に豪華な顔ぶれである。 それは美術や演出の凝りかたにも現れており、CGをふんだんに使って、濃密な画面が展開されている。 最後に出演者の名前が、スクリーンに映し出されるが、その背景になっているのが素晴らしい。 やや長い感じもしたが、切り絵のようで、その美しさを充分に堪能できる。 映画の展開にはあまり感激しなかったが、この映画を貫く美意識には感動させられた。 2004年アメリカ映画 (2005.05.27) |
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