|
|||||||||
中年男2人マイルス(ポール・ジアマッティ)とジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が、1週間かけてサンフランシスコ近くの、ワイナリーを巡る旅をする。 この旅は、結婚を控えたジャックの、独身最後を記念して行われたものだ。 2人はまったく性格が対照的で、マイルスは内向的で思索的。 テレビタレントのジャックは肉体派で行動的だった。 この映画の主題は、「マクマレン兄弟」の後日談といったところだろうか。
ジャックは独身最後の日を、女性たちをナンパしまくって、楽しい思い出を作りたいと考えていた。 それに対して、マイルスは離婚の痛手から立ち直れず、しかも、書き上げた原稿を出版社に送っており、その返事待ちという不安定な状況だった。 2人は大学時代に、寮の同じ部屋で過ごした仲だから、何でもありの間柄だった。 ワイン・ツアーの旅に出たが、ジャックは女性の物色にいそしんでいる。 心の傷を抱えたままのマイルスは、マヤ(ヴァージニア・マドセン)が秋波を送ってくるも、それに応えようとしない。 ジャックはイライラしどうしである。 そのうち、彼も素敵な女性スティファニー(サンドラ・オー)をハントする。 マヤとスティファニーは友人であることがわかり、彼らは4人でデートと洒落込む。 ジャックはスティファニーの肉体的な情熱に感激し、一時は結婚を考え直すほどの入れ込みよう。 一方、マヤはマイルスに好意を持ちながら、2人の仲はなかなか進展しない。 やっと結ばれたと思ったら、ジャックが結婚間近だということがばれてしまい、4人の仲はすべておじゃんになる。 話の展開はだいたい想像がつくのだが、結婚をしなくなった現代人が、結婚を決断する契機といったものを、しみじみと画面に描き出している。 「マクマレン兄弟」の時代には、結婚はまだ選択肢に入っていなかったが、時代がやや保守的に流れてきたので、自分の立場を固定したい気持ちが強くなってきた。 そんな時代背景を、この映画はペーソスを交えて描き出す。 4人の登場人物のうち、結婚を経験していなかったのは、ジャックだけである。 他の3人は、すでに離婚している。 4人のうち3人が離婚経験者とは、いかにも現代的な状況である。 しかも、最ももてるプレイボーイのジャックが、まだ結婚していなかったのだ。 この映画を見ていると、女性の地位が実にしっかりしてきたことを、今更のように感じる。 そして、彼女はレストランのウェイトレスをしながら、大学で園芸学の学位を取ろうとしている。 卒業後は、ワイン関係の仕事につくつもりである。 スティファニーもワインにかけてはプロであり、着実な経済的基盤をもっている。 ジャックとスティファニー、マヤとマイルスとこの2組の中年者たちは、それぞれに自分の人生を振り返りながら、友人関係を作っていく。 ジャックが結婚間近であることを知った、スティファニーの怒りはもっともだし、怒りの表現の仕方も当然なものだ。 マヤとマイルスとは、微温的な関係であるがゆえに、決裂も決定的ではない。 最後には、マイルスはマヤのところへ戻っていく。 精神的な上昇志向をもった男たちの、なかなか希望がかなわない日々を、切なく描いている。 普通の人間たちの、普通の日々を暖かく描くこの映画は、「マクマレン兄弟」が描いた時代との違いを鮮明に感じさせてくれる。 両者の間には、10年近い月日が流れている。 全員が肉体労働者だった時代、出版しようなど考えることはなかった。 マイルスは日々の仕事を越えて、自己表現をしたくてたまらない。 情報社会になって、多くの人間が知的な作業に関わるようになり、人間とは何かと考えるようになった。 昔はこんなことは考えられなかった。 健康に日々を生きることができれば、それ以上望むことはなかったし、高齢になって死ぬのは寿命だと諦めたのである。 観念に生きる情報社会は、人間存在が浮遊しているので、自己を問わざるを得ない。 掴み所のない時代がやって生きている。 そうした時代状況を、この映画はややシニカルに、暖かくも描いている。 秀作というほどではないが、いかにも時代の子であることが感じられて、なかなか考えさせる後味だった。 2004年アメリカ映画 (2005.03.16) |
|||||||||
<TAKUMI シネマ>のおすすめ映画 2009年−私の中のあなた、フロスト/ニクソン 2008年−ダーク ナイト、バンテージ・ポイント 2007年−告発のとき、それでもボクはやってない 2006年−家族の誕生、V フォー・ヴァンデッタ 2005年−シリアナ 2004年−アイ、 ロボット、ヴェラ・ドレイク、ミリオンダラー ベイビィ 2003年−オールド・ボーイ、16歳の合衆国 2002年−エデンより彼方に、シカゴ、しあわせな孤独、ホワイト オランダー、フォーン・ブース、 マイノリティ リポート 2001年−ゴースト ワールド、少林サッカー 2000年−アメリカン サイコ、鬼が来た!、ガールファイト、クイルズ 1999年−アメリカン ビューティ、暗い日曜日、ツインフォールズアイダホ、ファイト クラブ、 マトリックス、マルコヴィッチの穴 1998年−イフ オンリー、イースト・ウエスト、ザ トゥルーマン ショー、ハピネス 1997年−オープン ユア アイズ、グッド ウィル ハンティング、クワトロ ディアス、 チェイシング エイミー、フェイク、ヘンリー・フール、ラリー フリント 1996年−この森で、天使はバスを降りた、ジャック、バードケージ、もののけ姫 1995年以前−ゲット ショーティ、シャイン、セヴン、トントンの夏休み、ミュート ウィットネス、 リーヴィング ラスヴェガス |
|||||||||
|