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好評だった前作に続く第2作目は、外れが多い。 しかし、監督が替わったせいでか、この作品に限っては、そんなことはない。 むしろ前作「ボーン アイデンティティ」より、楽しめるくらいである。 短いカットを、たたみかけるように積み重ね、歯切れ良くリズミカルに物語が進行する。 典型的なアクション映画だから、星を2つ付けるわけにはいかないが、最近にない秀作である。
最初こそ、カットが長いかなと感じて秒数を数えたが、たちまち心配は吹き飛んだ。 4〜5秒の短いカットを、どんどんと繋いで、緊張感あふれる映像を楽しませてくれる。 記憶喪失の敏腕スパイという設定は、ブルース・ウィルスのダイハード・シリーズのように、今後もマット・デイモンの十八番となるだろう。 記憶のないスパイ、ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)が、インドで恋人のマリー(フランカ・ポテンテ)と遊んでいた。 しかし、追跡者は執拗に追いかけてくる。 とうとうマリーが殺されてしまった。 マリーと彼は、前作の最後で結ばれたはずだが、冒頭で殺されてしまうのには驚いた。 ヒロインはヒーローに劣らず重要な人物のはずだが、こんなに早く死なせるとは、男性中心の映画なのだろう。 マリーに入れ墨をさせているのは、入れ墨が市民権を得てきたことの証であろうか。 彼はイタリアのナポリへ行くが、そこでも追っ手が待ちかまえていた。 CIAとKGBの両方から追いかけられている。 直属の上司は死んでおり、CIAの幹部アボット(ブライアン・コックス)が、彼を亡き者にしようとしていた。 CIAのアボットと、ロシアの高官が結託して、アメリカから送られた大金をくすねた。 それを暴露しようとしたロシアの役人は、殺されてしまった。 この事件を知る者は、ジェイソンだけなので、アボットとロシアの役人は、執拗にジェイソンをねらったのだった。 CIAの内部調査が始まり、パメラ(ジョアン・アレン)が捜査に乗り出す。 当然のことながら、彼女の作戦遂行をアボットが妨害する。 ロシア側の殺し屋キリル(カール・アーバン)と、ジェイソンの抗争が見物である。 冷徹そうなキリルも、好敵手としてなかなかかっこいい。 前回はパリの街中で、古いミニにカーチェイスをさせたが、今度はモスクワ(撮影はポツダムだという)で、タクシーとBMWのカーチェイスをさせている。 劇場パンフレットによれば、このカーチェイスは合成らしいが、不自然さをまったく感じさせない。 カウンターを当てたまま直進させたり、想像を絶する運転である。 スパイもの、謎解きものでは、小さな仕掛けが、とても大切である。 携帯電話から情報を抜き出す技も驚きだったし、相手の居所を突き止めるのに、ジェイソンが電話を使うが、これが驚異的にすごい。 何気なく素早く、目的の情報を入手する。 こうした一連の行動が、実にかっこいい。 ジェイソンはとんでもないことをしていながら、彼の行動に力みや大げさなところがないのが良い。 不自然さを気づかせたら、この手の映画は失敗である。 1人で逃走しながら、どこからライフルを取り出したのか、衣類は着替えているのかなど、無粋な詮索はしない。 そんなことはどうでも良い。 不自然さをまったく感じさせることなく、スーパーマンが禁欲的にアクションする。 アクション映画は、荒唐無稽のスーパーマンで、まったく問題ない。 古い原作を元にしたこの映画でも、アメリカとロシアの通謀や、工作員たちの職場が狭まっていることなど、頷けることばかりである。 恋人を殺されて怒り心頭に発したり、高いところから飛び降りて足をくじくなど、冷徹で正確無比なスパイより、人間的なスパイが要望されているのだろう。 ル・カレの「リトル・ドラマー・ガール」など、スパイ映画の本場はイギリスだろうか。 そういえば、この監督もイギリス人である。 インドのゴア、ナポリ、ベルリン、モスクワと、それぞれの街の性格が画面でも、充分に感じられる。 明るいアジアに対して、陰鬱なヨーロッパの街、これでは人間の性格も変わろうというものだ。 映画の展開を追う楽しみだけではなく、変貌しているベルリンの雰囲気も感じられ、2時間弱を充分に楽しめる。 2004年アメリカ映画 (2005.02.03) |
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