タクミシネマ       ツイステッド

ツイステッド    フィリップ・カウフマン監督

 アメリカでも殺人課の刑事は、男性の多い世界らしい。
殺人課の新人捜査官として、ジェシカ(アシュレイ・ジャッド)が赴任する。
しかし、彼女が着任した早々から、連続殺人事件が起きる。
被害者は何と彼女がかつて肉体関係を持った男性ばかりだった。
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 新人捜査官でもあり女性でもあるために、彼女に嫌疑がかけられて、精神的に徐々に追いつめられていく。
コンビを組んだ捜査官マイク(アンディ・ガルシア)だけは、彼女を信じてくれたが、それも謀議の影で力を失っていく。
結末は意外感を持ちながらも、やや無理を感じるが、娯楽映画として1時間半を充分に楽しめる。

 殺人課の捜査官は、男性の世界だったろう。
女性警察官は、防犯や交通課に配属されやすい。
しかし、今日では性差別は許されない。
女性でも能力と意欲のある者は、殺人課に配属されてくる。
殺人課の刑事だった父親をもつ彼女は、将来を嘱望されて殺人課に着任したが、彼女には両親が殺されたことによるトラウマがあった。


 小さな頃に両親が殺されたので、彼女は父親の同僚だったミルズ(サミュエル・l・ジャクソン)に育てられた。
やっと憧れの殺人課の刑事になった。
そのとたんに、彼女の関係した男性が殺される。
彼女のトラウマと重なって、自分が殺したかも知れない、と疑心暗鬼になったいく。
自分が信じられない。

 1977年には「ミスター・グッドバーを探して」という、聾唖学校の女教師が、夜ごとバーに繰り出しては男を誘惑する映画が公開された。
この映画の結末は、主人公の女性が殺されて凄惨なものだった。
つまり当時は、女性が男をナンパすることは、否定されていたのだ。
しかし2004年の今日、女性も今や男性と同じ行動様式を持っている。
ジェシカはバーで男をナンパしては、セックスを楽しんでいた。


 男性が女性をナンパして、恐ろしい目に遭うのは、1987年に公開された「危険な情事」だった。
見知らぬ異性と関係を持つのは、男女ともに危険がいっぱいである。
しかし、個人化した現代人は、出会いを求めている。互いに好感をもてば、ベッドに入るのはまったく自由である。
多くの男性と同様に、ジェシカも異性との火遊びも、自分で始末できると考えていた。

 徐々に狭まってくる包囲網が、彼女を少しずつ苦境に追いやっていく。
何をやっても事情は好転しない。
切迫した状況を、画面はリアルに描きだしていく。
それなりに説得力がある。
しかし、いかに歳をとったといっても、アシュレイ・ジャッドを刑事にするには美人過ぎる。
彼女の妖艶な魅力が、刑事という設定に場違いである。

 彼女のような美人に迫られたら、誰でもフラフラするだろう。
だから、アシュレイ・ジャッドの美人さが、この映画を支えてもいるのだが、美人さが物語のある部分で浮き上がってしまっている。
サスペンスの中でことさら妖艶さが目立ち、他の設定と何か別種な印象を感じる。
彼女はすでに若くはなく、リフティングで顔の皺を消しているのが、画面でも感じられる。
しかし、加齢は妖艶さをうむ。


 この映画では、ヒロインが美人であることが不可欠だろうが、美人であることは難しい存在でもある。
かつては美人であることは、無条件に肯定された。
しかし、女性にも職業が開かれつつある現在、仕事の能力と美醜は関係ないので、美人は必ずしも有利とは限らない。
本人が望む以外のものを、周りの人間たちが決めてしまう。

 映画女優といえば、かつては美人の代名詞だった。
しかし、今やアメリカ映画には、美人女優が少なくなった。
シャーリーズ・セロンと並んでアシュレイ・ジャッドは、数少ない美人女優である。
だから彼女が配役されたのだろうが、美人がもてはやされたのは、女性が働かなくても済んだ時代の話だろう。
今後は、美人に難しい時代かもしれない。 

2004年アメリカ映画(2004.10.15)

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