タクミシネマ        ショコラーデ

ショコラーデ   ダニー・レヴィー監督

 実話を元にした話だという。ありそうな部分と、偶然が混在しており、どこまでが本当かわからない。
ユダヤ人の宣伝映画といった感じがしなくもない。
ナチ・ハンターに関しては、戦争犯罪人として追求というが、ユダヤ人たちの恐ろしいまでの執念である。
公式サイトから

 「戦場のピアニスト」で自己正当化を試みても、パレスチナでの蛮行を見ると、ユダヤ人の残酷さを改めて知る。
ユダヤ人たちは確かに虐待されたが、それを持続的に訴え続け、ユダヤ人たちの報復を、正義の行為だと認めさせてしまう。
その賢さに驚嘆する他ない。

 収容所送りから辛くも逃れた女性(リン・コーエン)が、友人のパスポートをもたされて、第2次大戦中にニューヨークに渡った。
彼女の両親は収容所で死んだと思っていたが、故郷ドイツで起こったチョコレート工場の火災を新聞で知ったとき、事件の真相に気がつく。
父親は生きていると考えた彼女は、息子のデヴィッド(ダニー・レビー)に調査を頼む。


 火事の後、チョコレート工場の経営者の娘(ニコール・ピーターズ)が、自分の娘レナ(マリア・シュラーダー)を訪ねてニューヨークにくる。
何と、パスポートの本当の主がこの女性であり、ニューヨークへ逃れた女性とは幼なじみだった。
どうしたわけか、2人は再会する。
現在の地位が侵されるのを恐れ、レナの母親は、幼なじみの女性を殺してしまう。
そして、殺されたこの女性を助けるのがレナで、しかもレナに恋するのが、殺され女性の息子デヴィッドなのだ。

 結局は、ナチの高官だったレナの祖父が、チョコレート工場の経営者であり、ユダヤ人を装って大金持ちになった。
それを知らないレナは、自分はユダヤ人だと思っていたが、実はナチの血を引いた人間であると知る。
事件の真相を追求するユダヤ人弁護士のカミンスキー(デヴィッド・ストラザーン)によって、祖父の誘拐殺人を手伝わされるが、デヴィッドによって阻止される。

 自分の母親を殺した女性の娘レナと、デヴィッドが恋仲になり、しかもレナはユダヤ人ではなかったにもかかわらず、デヴィッドはこの恋を貫くのである。
ナチ狩りを続けるカミンスキーの行動は、実によく判るが、デヴィッドの行動は不可解である。
遅れた恋だから、必死になったのか。
偶然に負っている部分が大きいせいか、映画は何を主張したいのかよく判らない。


 レナは30万人を虐殺した自分の祖父を、反ナチ法で告発するのに協力したと、字幕で説明された。
レナの母親は自殺したが、それでも彼女は祖父を告発したのか。
小さな時から一緒だった祖父を、ナチの高官だったという理由で、告発するのは我が国からでは、ちょっと想像が届かない。
なにせ戦争犯罪人である裕仁を、いまだに天皇として崇めている国民だから、ナチに対する追求は実感がわかない

 主題はナチ狩りの正当性か、それともユダヤ人はナチ狩りをも越えて、愛する男女を支持するというのか。
祖父は殺人者だが、レナは孫と言うだけで、無関係だから恋愛の対象として祝福する。
ユダヤ人はこんなに心が広いのだ、そう言いたいのだろうか。
死んだ母親の司法解剖すら拒否するユダヤ人が、ナチ残党の孫娘との恋愛を祝福するだろうか。


 ナチの高官だった祖父は首に傷があって、キリンと渾名されていたので、英語の題は「The giraffe」である。
この映画は、1998年に制作されているので、まだ世界貿易センターが残っている。
9.11によって、ニューヨークの風景は大きく変わってしまった。
しかし、6年も遅れてロードショーとはない話だろう。
1998年ドイツ映画 (2004.2.27)

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