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爆発的にヒットすると、ここまで変わってしまうのか。 驚くべきことに、前作とはまったく別の主題になっていた。 この映画は状況設定こそ、前作と同様なものを使っているが、話の内容はまったく別のお話である。 本作は、むちゃくちゃ大金のかかった、きわめて単純な娯楽映画である。
人類が住む地下だろうか、最後の砦ザイオンに、機械の群れが殺到する。 圧倒的な破壊力を相手に、人間たちは手も足も出ない。 手先である機械の群れを相手にしては、埒が明かないと考えたネオ(キアヌ・リーヴス)は、トリニティ(キャリー=アン・モス)と2人で本拠地マシン・シティへと向かう。 最後にネオは、機械のエージェントであるスミス(ヒューゴ・ウィーヴング)との対決に臨む。 彼が敗れて力つきて絶えようとすると、正義が敗れたことにより、正義の裏返しであるスミスも崩壊していく。 それにより、人類が救われるという結末である。 正義と悪は盾の両面であり、悪なくして正義がないという、日本人には馴染みにくい発想である。 徹底した二項対立的思考で、西洋人の発想だと感嘆しきりである。 しかし、地球を救うために、宇宙の果てまで行く話は、まるで宇宙戦艦大和である。 しかも、地球防衛軍は壊滅状態になり、自分の命を捧げることによって、やっと人類を救うというのは、何と陳腐な展開であろうか。 第1作で見せた複雑で深い洞察は、まったく影を潜めてしまった。 劇画的な画面の巧妙さには感嘆するが、それも大友克洋を連想させ、独創性が薄いと感じる。 当初、西洋人たちを相手に映画を作ったのだろう。 そのため、聖書やユダヤ教など、西洋人には馴染みのエピソードが、たくさん散りばめられていた。 それを読み解くのは、外国人である我々にも楽しい作業だったし、それが謎解きにもつながって物語に深みを与えていた。 しかし、あまりにもヒットしてしまったので、対象を世界を相手に変えたのだろう。 それとも、発想の泉が枯渇したのか。 主人公のネオとトリニティこそ白人のままだが、前作と異なりオラクルは黒人になり、希望の子供はインド人である。 当初の難しい話が、まったく影を潜めるのは、営業政策的には順当だと思う。 しかし、ヒットした第1作は、難しい設定だったことを、思い出して欲しい。 観客は決して単純な話だけを求めているのではない。 この映画に限らず、最近の映画作りは、実に複雑になっている。 部分部分を凝りに凝って作るから、密度がきわめて上がっている。 必然的に大人数が必要となる。 この映画でも、膨大な人間が制作に参加しており、日本人らしき名前も何人か見えたほどである。 おそらく各セクションごとの分業だろうし、分業を担当する人間間には、完成作の全体像は知らされていないだろう。 それにもかかわらずと言うか、だからというべきか、総合された映画はきわめて大規模になる。 もちろん部分の力があって、全体の力も向上するのだが、このくらい大きな作品になると、全体の統制が大変だろうと、いらぬ心配をしてしまう。 おそらく部分と全体と言った役割分担は、アメリカが今一番優れている。 これはコンピュータのプログラミングと同じ発想であり、インドなどは部分に関して強くても、全体的な構想力はいまだ及ばない。 期待した映画が、期待外れになることは良くある。 しかし、「バウンド」からの流れを見ていると、この若い監督には才能を感じていたので、とても残念である。 時代を切り開くために、現代アメリカ映画は、難しい主題を扱わざるを得なくなっているはずである。 娯楽映画を決して否定するわけではないが、先鋭的な主題を持った監督は、時代を突き進んで欲しい。 2003年アメリカ映画 |
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