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なぜこの映画が人気を博するのだろうか。 ファンタジーだからだろうか。 しかし、登場する人物は好人物とは限らず、主人公のフロド(イライジャ・ウッド)ですら、嫌味な少年である。 とりわけ今回は、フロドとお付きのサム(ショーン・アスティン)が、しばしば仲違いし、指輪の前の持ち主ゴラム(アンディ・サーキス)への対応は醜悪の一語に尽きる。
悪との対決で死んだはずのガンダルフ(イアン・マッケラン)が復活し、悪にとりつかれていたセオデン王(バーナード・ヒル)を助ける。 フロドとサムは、ゴラムの案内でモルドールへと向かうが、ゴラムに対して半信半疑であり、ゴラムも裏切りと追従に揺れ動く。 一方、敵軍に誘拐されたメリー(ドミニク・モナハン)とピピン(ビリー・ボイド)を追うアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)たちは、人間の国ローハンの危機を知り、サルマン(クリストファー・リー)との決戦に参加する。 と話の展開はこれだけだが、実に判りにくい。 しかも、ただ話が長いだけで、まったく整理されていない。 いくつかの話が同時並行で進むのは良いとしても、それぞれが上手く絡んでいないから、いちいち頭を切り換えて理解しなければならない。 上映時間も179分と、3時間に1分を切るだけで、とにかく長い。 2時間を超える映画は、よほど緊密に作らないと、観客の関心を持続させることはできない。 ましてやこの映画のように、場面場面の関連が薄く、しかも場面での動きは少ないとあっては、興味はとぎれてしまう。 フロド少年が指輪を捨てに行くのは、前作からの続き話だが、その話を支える前提が単純で残酷きわまりない。 主人公たちの善人対サルマンの悪という二項対立は、いかにもキリスト教徒好みの善悪対立論で、自己を相対的に見る近代人の視点はまったくない。 キリスト教的な前近代の視点は、どんな社会にあっても、子供を初めとしてそれなりの支持層をもっている。 単純な話であればあるほど、大衆受けしやすいはずだが、この映画はあまりにも残酷である。 とりわけ悪側の生き物は次々と殺され、顧みられることは一抹だにない。 悪側の生き物が、人間とまったく異なった姿をしているのなら、感情移入はしない。 しかし、彼らはきわめて似ているので、残酷に殺されていくのを見ていると、実に凄惨な気分になっていく。 アメリカは暴力に対して、表現行為の中でもそれなりに自粛しているはずで、特に子供向けの話には暴力はタブーになってさえいる。 にもかかわらず悪に対しては、暴力を用いて徹底的に壊滅させるこの映画は、まったくの真摯性を欠いたものといわざるを得ない。 きわめて不愉快な映画だった。 「ロード オブ ザ リング」の続編といいながら、一度に全3作を完成させているのだから、その内容は当然に予測がつくものだ。 前作の感想を読み返してみたら、「格闘のシーンが多く、残酷にすぎる」と書いており、ほとんど同じ文章に出くわし、見に行かなければ良かったと、とても後悔している。 2002年アメリカ映画 |
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